魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
長い時を生きてきたコハクは、魔法以外のことも極めていた。
…魔法使いのくせにやたら喧嘩慣れしていて、平気で拳を振るってくる。
しかも気を緩めていると押し返されそうなくらい力が強く、白騎士のリロイとしては魔法使いという立場のコハクには絶対に負けたくないという意地があった。
「いってえな!てめえ今本気で殴っただろ!」
「お前だって!魔法使いのくせに拳で殴るなんてどうかしてる!」
「魔法使いを馬鹿にすんな!昔はわんさか居たんだぜ。おっと、わき腹いただき」
「うぐっ!」
隙をついてリロイのわき腹に強烈な蹴りを見舞い、一見細く見えるコハクの右脚がわき腹に綺麗にめり込んで膝から崩れ落ちた。
「はぁ、はぁっ」
「っくそ、筋肉馬鹿が。夜も頑張らなきゃなのに疲れさせんじゃねえよ」
…ラスとの夜を語られそうになって一瞬頭の中がかあっと熱くなったが…ラスは自分のものではない。
魔王に愛されて、魔王の腕の中で朝を迎え、これでようやく元通りになったのだから…魔王に嫉妬するなんてお門違いだ。
――2人共唇からは血が滴り、頬は腫れ、無残な姿になっていた。
だがこうするのが自然だと思えてリロイを見下ろしていると、城内からティアラが駆けてくるのが見えた。
コハクは指で血を拭うとふいっと背を向けて悠々とその場から去り、ティアラはリロイの傍らで膝を折ると顔を覗き込んだ。
「リロイ!?何をしていたんですか!?」
「…ちょっと影と喧嘩をしていました」
「え?」
拳にはコハクの血がつき、コハクが本気で力でぶつかってきてくれたことが嬉しくて…
力と魔法という相反する立場ではあるが、とても遠かったコハクが歩み寄ってきてくれた気がして安心したのは事実。
やっぱりラスを幸せにできるのはコハクしか居ない。
すさまじく色ぼけではあるが…ラスに対しては子供のような一面を見せ、大切にしてくれているのがとてもよくわかる。
「やっぱり僕は影には勝てません」
「…リロイ、怪我の治療をしましょう」
何も言わず傍に居てくれるティアラ。
彼女にも、幸せになってほしい。
…魔法使いのくせにやたら喧嘩慣れしていて、平気で拳を振るってくる。
しかも気を緩めていると押し返されそうなくらい力が強く、白騎士のリロイとしては魔法使いという立場のコハクには絶対に負けたくないという意地があった。
「いってえな!てめえ今本気で殴っただろ!」
「お前だって!魔法使いのくせに拳で殴るなんてどうかしてる!」
「魔法使いを馬鹿にすんな!昔はわんさか居たんだぜ。おっと、わき腹いただき」
「うぐっ!」
隙をついてリロイのわき腹に強烈な蹴りを見舞い、一見細く見えるコハクの右脚がわき腹に綺麗にめり込んで膝から崩れ落ちた。
「はぁ、はぁっ」
「っくそ、筋肉馬鹿が。夜も頑張らなきゃなのに疲れさせんじゃねえよ」
…ラスとの夜を語られそうになって一瞬頭の中がかあっと熱くなったが…ラスは自分のものではない。
魔王に愛されて、魔王の腕の中で朝を迎え、これでようやく元通りになったのだから…魔王に嫉妬するなんてお門違いだ。
――2人共唇からは血が滴り、頬は腫れ、無残な姿になっていた。
だがこうするのが自然だと思えてリロイを見下ろしていると、城内からティアラが駆けてくるのが見えた。
コハクは指で血を拭うとふいっと背を向けて悠々とその場から去り、ティアラはリロイの傍らで膝を折ると顔を覗き込んだ。
「リロイ!?何をしていたんですか!?」
「…ちょっと影と喧嘩をしていました」
「え?」
拳にはコハクの血がつき、コハクが本気で力でぶつかってきてくれたことが嬉しくて…
力と魔法という相反する立場ではあるが、とても遠かったコハクが歩み寄ってきてくれた気がして安心したのは事実。
やっぱりラスを幸せにできるのはコハクしか居ない。
すさまじく色ぼけではあるが…ラスに対しては子供のような一面を見せ、大切にしてくれているのがとてもよくわかる。
「やっぱり僕は影には勝てません」
「…リロイ、怪我の治療をしましょう」
何も言わず傍に居てくれるティアラ。
彼女にも、幸せになってほしい。