魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
思う存分いちゃいちゃできて満足したコハクがラスを抱っこして食卓の間に姿を現わすと、すでに勢ぞろいしていた面々が揃って瞳を細めた。


「ようやく見慣れた光景が戻ってきたわねえ」


「ラスっ」


ティアラが声をかけると、ラスはコハクの腕から降りてティアラの隣に座り、魔王をむっとさせた。


「チビはこっち!」


「ううん、ここでいい。ねえみんな、明日ね、イエローストーン王国に行くの。ついて来てくれる?」


「それはいいけど…でもあそこまで行くのは骨が折れるよ。でも大丈夫だよ、僕が守って…」


「ふざけんなガキ。仕方ねえから俺んとこの犬に乗せてやる」


「えっ、ワンちゃん?元気にしてるかなあ、会えるの楽しみっ」


普段もほとんど食事に手をつけないオーディンの隣に座ったコハクとラスが笑みを交わし合い、次いでコハクとリロイの視線が交差すると、コハクが見えない速さでナイフをリロイに向かって投げ、頬をかすめて壁に突き刺さった。


「コー、喧嘩は駄目って言ったでしょっ?」


「喧嘩じゃねえし。手が滑っただけー」


「で?イエローストーン王国でまずは何をすべきかコハク様はもうアイディアが浮かんでらっしゃるのですか?」


ラスとティアラが食卓に並んだディナーにきゃっきゃと声を上げながら舌鼓を打っているのを薄目で見つつ、フォークで魚のソテーを突きまくりながらぶっきらぼうに答えた。


「元凶になった水晶がまだあるのか無いのか探す。で、除去して次は凍った奴ら。あいつらは…きっと駄目だな。……チビが泣くと思うからそれを見るのはつらい」


「…あなたが慰めて差し上げればいいじゃないですか。ああ、最強の魔王がレディー1人に振り回されるとはねえ…驚きですよ」


「うっせ。お前あとでチビが寝た後酒に付き合えよ。話してぇことがいっぱいあるからな」


「僕も参加する」


小声で話しているとそこにリロイが割って入ってきたので、偉そうに腕を組んでふんぞり返りながら口角を上げてにやりと笑った。


「へえ?チビと俺のあれこれを聴きてぇのか?」


「…お前と少し話をしてみたいんだ」


リロイからの申し出に、コハクは無邪気な笑みを浮かべた。
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