魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスを抱かない夜は作らない。

これは魔王が勝手に決めたルールで、とにかくラスから離れたくなくて、その夜も愛し合い、頭がおかしくなりそうなほどにラスに溺れた。


「コー、すっごく暑い…」


「だろうな、全力疾走してるようなもんだし。スポーツと同じー」


頬に張り付いた金の髪を払ってやり、腕の中にラスを抱きしめると2人で暖炉の炎を見つめた。

…穏やかな時間が流れる。

まだ息が上がっているラスの首筋にキスをして指を絡めると、激情が先走ってどうしてもラスに激しくしてしまうことを謝った。


「ごめん、なんで俺優しくできねんだろ…」


「ううん、そんなことないよ。コーがすっごく大切にしてくれてること、私は知ってるから」


「そっか?でも俺努力するし。チビが壊れねえように頑張るから」


ごろんと横になるとラスが胸にしなだれかかってきて、そうしながら疲れたのかうとうとし、身体が冷えないように魔法で布団をぽかぽかにあっためると一気に眠りに落ちていった。


――親に捨てられ、育ててくれたローズマリーから追い出され、それから長い時をずっと独りで生きて…


自分は何をも愛することができないのではないか。

そもそも愛とは一体なんなのか?


それだけを探し求めてここまで生きて来て、ようやく見つけた宝物――


もう失いたくない。

リロイとも和解し、オーディンやローズマリーといった博識の者が協力してくれる。

それに…何もできなかったラスが2年間の間に料理ができるようになったり、ある程度ひとりでなんでもできるようになったことが何より驚きだ。


必死になって精霊界まで捜しに来てくれた。


長年捜し求めていた相手が、自分を捜しに来てくれたのだ。


あの時燕の背に乗ってやって来たラスを見た時、不覚にも泣きそうになったことは内緒。


「お前はほんっと俺を驚かせる達人だよな。でもこれからは全部俺に任せろ。全部全部…」


すうすうと寝息を立てるラスの細くもやわらかい身体を限りなく優しく抱きしめ、コハクも眠りに落ちてゆく。


ラスが居ればどんなことでもできる。

ラスさえ居れば、どんなことでもできる。
< 148 / 728 >

この作品をシェア

pagetop