魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
何年も氷漬けになっていたままの国はどこを歩いてもとても寒く、ラスは真っ白な息を吐きながらコハクの首に縋り付いた。
「…見たくねえなら顔伏せとけって」
「ううん…大丈夫。ねえコー、もうこの人たちは…無理?」
――何に対して“無理”かを聴いているのはもちろん知っていたが、コハクはそれを口にせず、ラスの頭を優しく撫でながら息をついた。
「無理だろうな。でも氷から解放してやれるとは思う。解凍できたら埋葬してやろう。…だから泣くなって」
「泣いてないもんっ」
ラスの気丈な“泣いてないもんっ”は思いきり声が震えていて、それを本人も感じてか…しゃくり上げた。
「私も手伝う。王様と王妃様を一緒に埋めてあげようね」
「ああ。…人間はいつか死ぬんだ。でもチビ…俺たちはずっと一緒だからな。もう離れないって決めたんだ」
いつもはちゃらんぽらんなコハクが真剣な瞳で誓ってくれて、そんなコハクの真っ赤な瞳を見ていると徐々に落ち着いてきたラスは、あちこちで佇む氷漬けの使用人たちに触れて壊さないようにコハクの腕に抱かれながら身を縮めて頷いた。
「どっかで力は感じるなあ。下の方か」
螺旋階段を下りていくうちに寒さはどんどん増してきて、この状況を生み出した元凶に近付いているのがわかった。
2年前訪れた時はこの国の行く末など気にも留めていなかったが、ラスがずっと気にしていたことを知り、そして結婚への条件でもある。
ラスだけの勇者様なのだからやり遂げなければならない。
密かにかなりやる気の魔王は階段を上がる度に身体の芯からずんずんと響く重低音に眉をしかめた。
「コー?どうしたの?」
「…俺を呼んでる」
「コーを?どうして?」
「さあな。チビは何もしなくっていいからじっとしてるんだぞ」
水晶の濃厚な力に近づき、ラスが影響を受けないように結界を張るとドーム状になっている部屋の前で立ち止まった。
「ここか。さ、行くぞー」
両開きの扉を押し、中へと入る。
助けを求める水晶を助けに――
「…見たくねえなら顔伏せとけって」
「ううん…大丈夫。ねえコー、もうこの人たちは…無理?」
――何に対して“無理”かを聴いているのはもちろん知っていたが、コハクはそれを口にせず、ラスの頭を優しく撫でながら息をついた。
「無理だろうな。でも氷から解放してやれるとは思う。解凍できたら埋葬してやろう。…だから泣くなって」
「泣いてないもんっ」
ラスの気丈な“泣いてないもんっ”は思いきり声が震えていて、それを本人も感じてか…しゃくり上げた。
「私も手伝う。王様と王妃様を一緒に埋めてあげようね」
「ああ。…人間はいつか死ぬんだ。でもチビ…俺たちはずっと一緒だからな。もう離れないって決めたんだ」
いつもはちゃらんぽらんなコハクが真剣な瞳で誓ってくれて、そんなコハクの真っ赤な瞳を見ていると徐々に落ち着いてきたラスは、あちこちで佇む氷漬けの使用人たちに触れて壊さないようにコハクの腕に抱かれながら身を縮めて頷いた。
「どっかで力は感じるなあ。下の方か」
螺旋階段を下りていくうちに寒さはどんどん増してきて、この状況を生み出した元凶に近付いているのがわかった。
2年前訪れた時はこの国の行く末など気にも留めていなかったが、ラスがずっと気にしていたことを知り、そして結婚への条件でもある。
ラスだけの勇者様なのだからやり遂げなければならない。
密かにかなりやる気の魔王は階段を上がる度に身体の芯からずんずんと響く重低音に眉をしかめた。
「コー?どうしたの?」
「…俺を呼んでる」
「コーを?どうして?」
「さあな。チビは何もしなくっていいからじっとしてるんだぞ」
水晶の濃厚な力に近づき、ラスが影響を受けないように結界を張るとドーム状になっている部屋の前で立ち止まった。
「ここか。さ、行くぞー」
両開きの扉を押し、中へと入る。
助けを求める水晶を助けに――