魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
『誰か助けて…』
か細く透き通った助けを求める声が扉の向こうから聴こえた。
コハクが扉を押すと、真っ白な冷気を吐き出しながらゆっくり開き、円形に数人座っている姿が見えたが…もちろん生きているはずはないだろう。
よく見ると全員ローブを着ていて、全員初老ほどの歳で、無念の表情を浮かべて瞳を閉じていた。
そして円の中心には…
『誰…?あなたは、誰…?』
「誰でもいいだろ。お前が王国を凍らせた水晶の精だな」
――円の中心に、ラスの背丈ほどの大きな水晶の塊が静かに鎮座していた。
水色の半透明の女性は瞳からほろほろと涙を零しながらこちらに近付いて来ると、コハクの匂いを嗅ぐような仕草をした。
「きゃ…っ」
「大丈夫だって、何もしやしねえよ。つか俺がさせねえし」
『あなたは…魔法の匂いがする…。いえ、むしろ私たちと同じ匂いが…』
「ああ、わかるか?つかなんでこんなことになった?全部凍らせなくても良かっただろ」
冷え切ったラスの背中を擦ってやりながら真っ白な息を吐くと、水晶の精はまたさめざめと泣きながら首を振った。
『無理矢理水晶の森から連れ去られたの。こんな所に居たくない。私たちの力は人間には使いこなせない。だからこうするしかなかった』
そう言ってコハクの頬に手を伸ばして触れる仕草をすると、水晶の精はコハクに懇願し、求めた。
『お願い…連れて帰って。私を水晶の森へ…』
「えー?めんどいし」
「コー、お願い聞いてあげて?私からもお願い」
ラスが水晶の精に同調してコハクの耳元で囁くと、ラスの願いならなんでも叶えてあげたいコハクはラスの頬にキスをして肩で息をついた。
「わぁった、連れてってやるから冷気出すのやめろ。俺はここを再建しなきゃいけねえんだ、さっさと連れてくぞ」
『あなたは…私と“同じ”じゃないの?』
問われ、コハクは真っ赤な瞳を瞬かせるとふっと笑い、ラスのお尻を撫でまくった。
「同じだけど同じじゃない。お前らこういう引っかけ得意だろ?解いてみろよ」
水晶の精はまたコハクの匂いを確かめるように鼻を鳴らした。
か細く透き通った助けを求める声が扉の向こうから聴こえた。
コハクが扉を押すと、真っ白な冷気を吐き出しながらゆっくり開き、円形に数人座っている姿が見えたが…もちろん生きているはずはないだろう。
よく見ると全員ローブを着ていて、全員初老ほどの歳で、無念の表情を浮かべて瞳を閉じていた。
そして円の中心には…
『誰…?あなたは、誰…?』
「誰でもいいだろ。お前が王国を凍らせた水晶の精だな」
――円の中心に、ラスの背丈ほどの大きな水晶の塊が静かに鎮座していた。
水色の半透明の女性は瞳からほろほろと涙を零しながらこちらに近付いて来ると、コハクの匂いを嗅ぐような仕草をした。
「きゃ…っ」
「大丈夫だって、何もしやしねえよ。つか俺がさせねえし」
『あなたは…魔法の匂いがする…。いえ、むしろ私たちと同じ匂いが…』
「ああ、わかるか?つかなんでこんなことになった?全部凍らせなくても良かっただろ」
冷え切ったラスの背中を擦ってやりながら真っ白な息を吐くと、水晶の精はまたさめざめと泣きながら首を振った。
『無理矢理水晶の森から連れ去られたの。こんな所に居たくない。私たちの力は人間には使いこなせない。だからこうするしかなかった』
そう言ってコハクの頬に手を伸ばして触れる仕草をすると、水晶の精はコハクに懇願し、求めた。
『お願い…連れて帰って。私を水晶の森へ…』
「えー?めんどいし」
「コー、お願い聞いてあげて?私からもお願い」
ラスが水晶の精に同調してコハクの耳元で囁くと、ラスの願いならなんでも叶えてあげたいコハクはラスの頬にキスをして肩で息をついた。
「わぁった、連れてってやるから冷気出すのやめろ。俺はここを再建しなきゃいけねえんだ、さっさと連れてくぞ」
『あなたは…私と“同じ”じゃないの?』
問われ、コハクは真っ赤な瞳を瞬かせるとふっと笑い、ラスのお尻を撫でまくった。
「同じだけど同じじゃない。お前らこういう引っかけ得意だろ?解いてみろよ」
水晶の精はまたコハクの匂いを確かめるように鼻を鳴らした。