魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「要は大きさじゃねえ。内包してる潜在的なパワーの強さだ」


大木のような水晶の柱に触れると、掌から脈打つ何かが伝わってきた。

…この身体に流れているものと同じものを感じてしばらくそうしていると、ラスが背中に引っ付いてきた。


「コー、何してるの?」


「光合成ー」


「え?それって植物がするやつでしょ?」


「ま、そうなんだけど、俺にとっちゃこの森に流れる魔力や空気が太陽の光みたいなもんだ。…よし、やるかー」


――欠片だけでも魔物を退けるには十分な魔力を秘めていて、隣に佇む水晶の森の女王に再度問うた。


「いいんだな?」


『欠片であっても私は私。おまえが作る王国を未来永劫守ってあげる。…それが親としての役目でしょう?』


「…じゃ、お言葉に甘えて」


親というものを全く知らないコハクにとって水晶の森の女王の言葉は耳にくすぐったく、最も魔力の濃度の高そうな部分を指すとラスを抱っこして1歩退いた。


「ここでいい。大きくても運ぶのがめんどいから小さくていいぜ」


『ふふ、少し前のあなただったら私の本体ごと全て持って行ったでしょうね』


「うっせ。掌くらいのでいい」


どこかぎくしゃくした態度のコハクがおかしくてラスがくすくす笑うと、こつんとラスの頭を小さく叩き、抗議した。


「なーんだよ、笑うんじゃねえよ」


親子の会話に口出しはするまいと思っていたラスがそのままにこにこしていると、水晶の森の女王が本体からコハクの掌大の水晶を削り取り、ラスの手に乗せた。


「わ、重たい」


『大切にして』


ずっしりと重たい水晶を両手で持ちながら、きらきらと光る無限の力を持つ結晶体に見入った。

…リロイは黒い感情を抱えて水晶を手にし、果てにコハクを手にかけた。

水晶は所持する者の感情に応じて白にも黒にもなり得る。

清廉潔白な心でもって大切に扱わなければ。


「コー、これ」


「チビが持ってろよ。無くすんじゃねえぞ」


「子供扱いしないでっ」


――そしてラスが胸の谷間に水晶を挟むと…魔王、大コーフン。


「やっべ!コーフンしてきた!」


いつも、ラスに夢中。
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