魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
仲睦まじい2人の姿を見た水晶の森の女王は、かつてコハクがここへと捨てられた時のことを思い返していた。
『ごめんね…ごめんね…!』
待ち望んで生まれた我が子の瞳の色は赤。
コハクの両親は“不吉だ”と村の者たちから糾弾され、コハクを手放すしかなかった。
この水晶の森でなら、魔物に襲われることはない。
ここでなら、きっと穏やかな死を迎えることができるだろう。
…精神を強く保たなければ気が狂ってしまうかもしれないリスクを抱え、半ば心中覚悟でやってきたコハクの両親。
最も仄暗く、寿命や役目を終えた水晶が固まっている暗がりへと入ると、そこにコハクを起き、また謝っていた。
『一生を賭けて償うから…!許してちょうだい…!』
――水晶の森の女王は森全体の神経を集中し、張り巡らせてその会話を聴いていた。
…人の子などあっという間に気が触れ、死んでしまうだろう。
だが両親が去って行った後もコハクは生き、泣き続けていた。
『不思議な子…』
実体化して産着に包まれたコハク…赤子を抱くと、真っ赤な瞳に確かに魔力を感じた。
赤は不吉な色。
赤い髪、赤い瞳をした者は迫害を受け、そしてコハクもまた――
「きゃぷ」
目が合うと泣き止み、小さな手を伸ばして胸に触れてきたあの瞬間、母性が芽生えた。
だが人ではない身。
乳が出るはずもなく、森全体を使って栄養素を含んだ水と、水晶を液状化させて混ぜたものを飲ませ、時には葉を伝わせて唇に落としてやり、コハクは数週間生き延びた。
そして森の奥に住む大賢者ローズマリーの家へ行き、ノックをすると大地にコハクが着ていた産着や帽子、靴下などを転々と落し、ローズマリーを水晶の墓場へと導いて保護させた時…
ほっとして、そして軽くなった腕にせつなさを覚えたこと…
――見守るしかないと決め、成長したコハクとローズマリーが薬草を採りに森へ入ってくる度に、その身体に流れているものが自分と同じものであることに嬉しさを感じ、喜びを覚えた。
『私の子よ…また遊びに来てね』
息子が小さく微笑んだ。
『ごめんね…ごめんね…!』
待ち望んで生まれた我が子の瞳の色は赤。
コハクの両親は“不吉だ”と村の者たちから糾弾され、コハクを手放すしかなかった。
この水晶の森でなら、魔物に襲われることはない。
ここでなら、きっと穏やかな死を迎えることができるだろう。
…精神を強く保たなければ気が狂ってしまうかもしれないリスクを抱え、半ば心中覚悟でやってきたコハクの両親。
最も仄暗く、寿命や役目を終えた水晶が固まっている暗がりへと入ると、そこにコハクを起き、また謝っていた。
『一生を賭けて償うから…!許してちょうだい…!』
――水晶の森の女王は森全体の神経を集中し、張り巡らせてその会話を聴いていた。
…人の子などあっという間に気が触れ、死んでしまうだろう。
だが両親が去って行った後もコハクは生き、泣き続けていた。
『不思議な子…』
実体化して産着に包まれたコハク…赤子を抱くと、真っ赤な瞳に確かに魔力を感じた。
赤は不吉な色。
赤い髪、赤い瞳をした者は迫害を受け、そしてコハクもまた――
「きゃぷ」
目が合うと泣き止み、小さな手を伸ばして胸に触れてきたあの瞬間、母性が芽生えた。
だが人ではない身。
乳が出るはずもなく、森全体を使って栄養素を含んだ水と、水晶を液状化させて混ぜたものを飲ませ、時には葉を伝わせて唇に落としてやり、コハクは数週間生き延びた。
そして森の奥に住む大賢者ローズマリーの家へ行き、ノックをすると大地にコハクが着ていた産着や帽子、靴下などを転々と落し、ローズマリーを水晶の墓場へと導いて保護させた時…
ほっとして、そして軽くなった腕にせつなさを覚えたこと…
――見守るしかないと決め、成長したコハクとローズマリーが薬草を採りに森へ入ってくる度に、その身体に流れているものが自分と同じものであることに嬉しさを感じ、喜びを覚えた。
『私の子よ…また遊びに来てね』
息子が小さく微笑んだ。