魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
瞬時に気を高め、集中したコハクはまだ凍り付いたままの大地に掌を翳し、召喚するといつも口喧嘩になってしまう火の精霊を呼び出した。
「サラマンダー」
『……何用か』
「何用か、じゃねえよ。わかってんだろ、手伝ってくれよ」
炎のヴェールを纏い、浮かび上がった魔法陣から姿を現わしたのは精霊界で見た人型のものではなく、真っ赤な鱗を持つ大型の蜥蜴だった。
「コー、今日はサラマンダーさんは蜥蜴なんだね」
「こいつはこれが本来の姿さ。触るんじゃねえぞ、骨まで焼き尽くされるからな」
ラスを腕から下ろし、じっと黙ったまま見上げているサラマンダーと対峙したコハクは、自分だけに叩き付けて来る殺気と真っ向からぶつかりながらも強い言霊を乗せて呼びかける。
「ここは水晶の力で凍ってる。この氷を解かすことができるのは火を自在に操るお前だけだ。建物を焼かず、人を焼かず、氷だけを溶かしてくれ」
『………我に見返りはあるのか?』
やっぱり、といった顔で肩を竦めたコハクは人差し指でオーディンを呼び出すと隣に立たせ、腰に手をあてて偉そうな態度でサラマンダーを指差した。
「何が望みだ?」
『暴れたい』
「だから駄目だっつってんだろが。…おい蜥蜴、どこ見てる」
サラマンダーの視線の先にはティアラと腕を組んだラスが居て、常々この炎の精霊がラスに興味を持つので、コハクは視線を遮るように立ちはだかりながら再度根気よく呼びかけた。
「俺に召喚されればいつだってチビに会えるぜ」
『…………それは面白そうだ。後でちょっと触らせろ』
「ふざけんな調子に乗るんじゃねえ!」
――四精霊への敬意はどこへやら。
だがラスは自身の名が出たことで長い舌をちろちろと出しているサラマンダーに駆け寄ると膝を折って笑いかけた。
「お願い聞いてもらえますか?」
『時間はかかるがやってやる。魔王、この王国に結界を張れ』
「おうよ」
交渉が成立し、コハクが瞳を閉じて長い両腕を水平に広げた。
ラスは隣でずっと見惚れていた。
「サラマンダー」
『……何用か』
「何用か、じゃねえよ。わかってんだろ、手伝ってくれよ」
炎のヴェールを纏い、浮かび上がった魔法陣から姿を現わしたのは精霊界で見た人型のものではなく、真っ赤な鱗を持つ大型の蜥蜴だった。
「コー、今日はサラマンダーさんは蜥蜴なんだね」
「こいつはこれが本来の姿さ。触るんじゃねえぞ、骨まで焼き尽くされるからな」
ラスを腕から下ろし、じっと黙ったまま見上げているサラマンダーと対峙したコハクは、自分だけに叩き付けて来る殺気と真っ向からぶつかりながらも強い言霊を乗せて呼びかける。
「ここは水晶の力で凍ってる。この氷を解かすことができるのは火を自在に操るお前だけだ。建物を焼かず、人を焼かず、氷だけを溶かしてくれ」
『………我に見返りはあるのか?』
やっぱり、といった顔で肩を竦めたコハクは人差し指でオーディンを呼び出すと隣に立たせ、腰に手をあてて偉そうな態度でサラマンダーを指差した。
「何が望みだ?」
『暴れたい』
「だから駄目だっつってんだろが。…おい蜥蜴、どこ見てる」
サラマンダーの視線の先にはティアラと腕を組んだラスが居て、常々この炎の精霊がラスに興味を持つので、コハクは視線を遮るように立ちはだかりながら再度根気よく呼びかけた。
「俺に召喚されればいつだってチビに会えるぜ」
『…………それは面白そうだ。後でちょっと触らせろ』
「ふざけんな調子に乗るんじゃねえ!」
――四精霊への敬意はどこへやら。
だがラスは自身の名が出たことで長い舌をちろちろと出しているサラマンダーに駆け寄ると膝を折って笑いかけた。
「お願い聞いてもらえますか?」
『時間はかかるがやってやる。魔王、この王国に結界を張れ』
「おうよ」
交渉が成立し、コハクが瞳を閉じて長い両腕を水平に広げた。
ラスは隣でずっと見惚れていた。