魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コンコン。

朝陽が差し込む窓を突いているような音がしてラスが目覚め、しばらくぼけっとしていると…怒られた。


「ちょっとラス!早く開けなさいよ!」


「…!?あ…ベルルだ!」


「んあー…なんだよチビ…もうちょっとここに居ろって…」


寝ぼけているコハクから腕を引っ張られて引き留められたが、腕を振りほどくとすっかり目が覚めたラスが窓を開け放った。


精霊界へ行く時は“ここに残る”と言っていたので実は密かに捜していたのだが…


ラスが両の掌を見せると頬を膨らませたベルルがちょこんと掌に座り、羽を閉まった。


「ベルルっ、どこに行ってたの?捜してたんだよ」


「ちょっと里帰り。で…コハク様は…?」


――ベルルが今もコハクのことを愛していることは知っている。

だが2人はわかり合っていたので、ラスがベッドを指差すと…コハクが頬杖を突いてこちらを見ていた。


「ベルルか…ちょっとぶりだな。2年経ったって実感俺にはねえんだけど」


「コハク様…本当にコハク様だ…!」


だがラスに遠慮して駆け寄ることができないでいると、ラスはベルルを掌に乗っけたままコハクに駆け寄り、頭に留まらせた。


「いつの間にお前ら仲良くなったんだよ。ま、いいことだけど」


「2年間捜してたんですよ、コハク様…!生きてて良かった…!」


ぽろぽろと涙が零れ、ラスがもらい泣きしてしまうと、焦った魔王はベルルの額にデコピンをかましてラスを胸に抱き寄せた。


「泣くなってー。な、チビ。ほら」


「きゃ、や、コー、やめて、きゃははは!」


身体中くすぐられて布団の中でもがいていると、ベルルが涙を拭ってぱたぱたとコハクとラスの回りを飛び回った。


「またお役に立てるように頑張ります!ラスとコハク様が幸せになってもらうためにあたし…」


「おう、またよろしく頼むぜ。てかもう朝なのかー、チビの作った朝飯が食いてえなー」


「うんっ、わかった!ベルル、手伝ってもらえる?」


「いいよ、早く行こ!」


ラスとベルルが居なくなり、コハクは天蓋ベッドの天井を見つめながらだらだらしていた。


魔王の実力が発揮される時が来る。
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