魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「やべえ!超もったいねえんだけど!」


あたたかいスープやオートミール、フルーツなどがテーブルに並び、コハクが悶えていると、ラスがぴょんぴょん跳ねながら催促をした。


「コー、冷めちゃうから早く食べてっ」


「だってもったいねえじゃん!でも食う!」


まさかラスに料理をふるまってもらえる日が来るとは思っていなかったので、そこは素直に感動した魔王が手作りの肉団子が入ったスープを口にして瞳を輝かせると、ラスも隣に座ってコハクの膝に触れた。


「今日は沢山頑張らなくちゃいけないんでしょ?イエローストーン王国を救えるのはコーしか居ないって思ってたよ」


「ま、これからだけどな。てかチビは何もしなくっていいけど小僧やボインたちにはへとへとになってもらうからな」


「?何をしてもらうの?」


「人海戦術ー」


話しているうちに食卓の間にリロイが現れ、後ろ髪が少し跳ねているリロイに駆け寄ると腕に絡み付いて見上げた。


「リロイおはよ!後ろ髪が跳ねてるよ、直してあげるね」


「チビ!こっち来なさい!」


「おはようラス。ありがと、自分でできるから」


リロイが笑い、そんなリロイの笑顔が大好きなラスはテーブルについたリロイの前に手作りの朝食を並べた。

ラスの手料理を独り占めできると思っていた魔王がいらいらしながら行儀悪くスプーンでテーブルを叩き、頬杖を突きながら跳ねた髪を押さえているリロイを睨みつけた。


「イエローストーン王国は俺に任せろ。それよりお前やボインたちは各国を回ってもらうからな」


「…は?各国って…僕たちに何をさせるつもりなんだ?」


「移住を呼びかけるんだ。ま、そういうのは見目が良い奴らがやった方がいい。しかも王女や騎士が再建計画を動かしていると知ったら単純な平民たちはどう思うかなあ、とりあえず見に来るだろ?」


ラスが何度もリロイに笑いかけるので、それがむかついてたまらない魔王はラスを羽交い絞めにして無理矢理膝に乗せると、呆気にとられているリロイとは対照的に欠伸をしながらラスの首筋にキスをした。


「半年以内に再建する。きりきり働けよ」


実は最もきりきりしなければならないのは魔王なのだが…
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