魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
魔王が必死になってラスに構ってもらおうと躍起になっていた時、ティアラは一緒に庭園へ降りながらリロイの挙動不審を指摘した。


「どうしたんですか?様子が変ですよ?」


「な、なんでもないですよ、大丈夫です」


「でも……ローズマリーが何か?」


オーディンとローズマリーが談笑している光景を何度もチラ見しているので聴いてみると、観念したリロイがようやく腰を屈めて顔を近付けてきたので、ちょっとどきっとしながら待っていると、こそりと打ち明けてきた。


「あの2人が昨晩キスしていたんです。僕たちみんな“恋人同士になる”に賭けてますから、賭けになりませんね」


「えっ!」


つい大きな声を上げてしまい、ラスを抱っこした魔王が振り向くと、ティアラは口から出た言葉を閉じこめるようにして両手で口を覆うと顔を赤くした。


「そうなんです、か…。やっぱりあの2人…」


「だから僕がキスしているのを見た後もしかしたら……深い関係になったんじゃないかな、と…」


「そ、そうですよね…あり得ますよね…」


2人でもじもじしていると、会話に参加したいラスが手を伸ばして魔王の腕の中で大暴れ。


「なんのお話?私も聴きたいっ」


「や、なんでもないよ。それより今日も僕たちはそれに乗らなきゃいけないのかな」


「あったりめえだろ、でも徒歩で行きたいのなら止めねえぞ」


『えー、魔王様ー、ラスを乗せたいよー』


ドラちゃんと共に同時に召喚していたケルベロスが不満をたれるとコハクが拳骨を作ったのですぐに大人しくなり、コハクはさっさとドラちゃんの背に乗り込んだ。


――そうしながらラスは仲間内に流れている雰囲気に気付き、コハクの背中に腕を回しながら見上げた。


「ねえコー、お師匠さんとオーディンさんって…」


「あー、ないない。オーディンは真理を求め、放浪を定められた者だからひとつの場所に長く留まることはねえから、あいつらがくっついたとしてもすぐ別れる」


「そうなの?でも…お師匠さんには幸せになってほしいな。コーもそう思うでしょ?」


――受け入れたふりをして、何をも拒む大賢者の心を動かすのは?
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