魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「てか順番間違えたなー」


「何を…間違えたの?」


2年という月日の中で、細いのは相変わらずだったが、すっかり女らしくなったラスが腕の中でキスの余韻に瞳を潤ませていると、コハクは唇でラスの耳をくすぐりながら、長い人差し指で地面を指した。


「ここの城のベッドルームを1番に解凍しときゃよかった。そしたらさ、チビと…いつだってできるじゃん」


「…知らないとこじゃやだっ。コーの馬鹿、触んないでっ」


「おっ?なんだよチビ、嫌がられると余計に燃えるんだよ!」


…結局ラスが何をしても燃えることのできる魔王が腕の中で身をよじるラスの膨らんだ頬を突いて破裂させると、もう完全に煉瓦造りの地面が見えている街を見下ろして、ぽつりと呟いた。


「壊すのは得意だけど、俺が何かを生み出すなんてな…昔じゃちょっと考えられなかったな」


「?なに言ってるの、コー?コーは魔物さんを心の綺麗な魔物さんに改造したり、綺麗なお花を作ったり、とっても美味しい蜂蜜を作ったでしょ?コーの手は魔法の手なんだよ、コーの手にかかったらなんでも綺麗に生まれ変わることができるんだから」


ラス以外の者に絶賛されても鼻を鳴らす程度の反応しか見せない魔王だが、ラスから絶賛されると…みるみる耳が赤くなり、ラスから両耳を引っ張られた。


「コーったら照れてる」


「うっせ!ちなみにチビも俺の手で綺麗に生まれ変わったろ?いやいや間違えた!チビは元々綺麗だったもんな」


「ううん、コーが居なかったら私、ずっと芋虫のままだった。なんにも知らなくて、ずっとお城の中に閉じこもって…。ねえ、コー、私、コーのことだいす………あっ、グラースだ!」


「ちょ、待てチビ!“だいす…”の続き!続き言ってくれ!」


必死に気を引こうとしたが、剣を手に街を見て回っていたグラースが眼下に見えた途端、ラスの気は一瞬にしてグラースの方に向いてしまい、魔王、がっかり。


「グラース!グラース!!…聴こえてないみたい」


「じゃあ下りっか」


コハクが唇に人差し指をあてて口笛のように音を鳴らすと、グラースが顔を上げ、そして唇が動いた。


“何か居る”と――
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