魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
辺りを見回して警戒を怠っていないグラースと合流すると、本当に王女なのかと疑ってしまうほどに凛々しい金の髪の元王女はグリーンの瞳を細めた。
「何かがちょろちょろと走り回っている。恐らく魔物だ」
「だから解凍が遅いのかー。あっ、こら、チビ!勝手に離れんな!」
…魔物よりもラスのことが心配でたまらない魔王は、グラースと話している間に傍を離れてグリーンリバーからやってきた改造済みの魔物の後をついて行ってしまい、盛大なため息。
「どうする、殺していいのか?」
「とりあえず生け捕りだな。駄目なら殺せ。チビに見られんじゃねえぞ」
「わかった」
話している最中もラスから目を離さない魔王に苦笑したグラースは、腰に手をあてると妖艶な笑みを浮かべた。
「ところで…部屋を移動しようと思う」
「あ?なんでだよ」
「私の部屋はラスの隣だ。お前たちの声が夜な夜な聴こえて、気が散って眠れない」
すぐにぴんときた魔王は、握りこんだ手の中からゴムを出現させ、少し長い髪をひとつに縛りながら片眉だけ上げてにやり。
「あー、そりゃ悪いな。チビのかーわいい鳴き声が聴こえたんだろ?チビに言っとく。迷惑かけたな」
「お前はこれから忙しくなる。毎日あんな感じだとすぐにげっそりするぞ」
「まさか。俺を誰だと思ってる」
そしてほかほかになった花壇の前に座り込み、鳥頭の魔物と一緒に花の種を植えているラスを視界に捉えると、そちらに脚を向けながら手を挙げた。
「すぐにガキが沢山できる。お前にも手伝ってもらうからな」
「ああ、わかった」
――グラースは掌を見つめた。
長年剣を持ち続けたせいで固くなり、ちっとも女らしくない手になってしまったが、ラスと居ると…ふんわりしていて、魔物とは縁のなかった頃の自分を思い出す。
ラスには過去の自分を投影してしまって申し訳ないとは思いつつも、できるなら…幸せになってもらい、その幸せにあやかりたい。
「私もまだまだだな。まだまだ弱い」
手に馴染んだ剣を持ち直し、コハクたちとは反対側の方へと歩き出した。
「何かがちょろちょろと走り回っている。恐らく魔物だ」
「だから解凍が遅いのかー。あっ、こら、チビ!勝手に離れんな!」
…魔物よりもラスのことが心配でたまらない魔王は、グラースと話している間に傍を離れてグリーンリバーからやってきた改造済みの魔物の後をついて行ってしまい、盛大なため息。
「どうする、殺していいのか?」
「とりあえず生け捕りだな。駄目なら殺せ。チビに見られんじゃねえぞ」
「わかった」
話している最中もラスから目を離さない魔王に苦笑したグラースは、腰に手をあてると妖艶な笑みを浮かべた。
「ところで…部屋を移動しようと思う」
「あ?なんでだよ」
「私の部屋はラスの隣だ。お前たちの声が夜な夜な聴こえて、気が散って眠れない」
すぐにぴんときた魔王は、握りこんだ手の中からゴムを出現させ、少し長い髪をひとつに縛りながら片眉だけ上げてにやり。
「あー、そりゃ悪いな。チビのかーわいい鳴き声が聴こえたんだろ?チビに言っとく。迷惑かけたな」
「お前はこれから忙しくなる。毎日あんな感じだとすぐにげっそりするぞ」
「まさか。俺を誰だと思ってる」
そしてほかほかになった花壇の前に座り込み、鳥頭の魔物と一緒に花の種を植えているラスを視界に捉えると、そちらに脚を向けながら手を挙げた。
「すぐにガキが沢山できる。お前にも手伝ってもらうからな」
「ああ、わかった」
――グラースは掌を見つめた。
長年剣を持ち続けたせいで固くなり、ちっとも女らしくない手になってしまったが、ラスと居ると…ふんわりしていて、魔物とは縁のなかった頃の自分を思い出す。
ラスには過去の自分を投影してしまって申し訳ないとは思いつつも、できるなら…幸せになってもらい、その幸せにあやかりたい。
「私もまだまだだな。まだまだ弱い」
手に馴染んだ剣を持ち直し、コハクたちとは反対側の方へと歩き出した。