魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「急に恥ずかしがられるとさあ、俺も照れるんだよなー」


「コーの言ってることのほとんどがわかんないけど、私にだって時々はコーの言ってることわかるもん。これからはわかんないことだけでいいよ」


「いーや、チビの照れてる顔もコーフンする!ほら、しっかり捕まってろよ」


ラスが首にしがみつくと、屋上に通じるタラップの前で脚に浮遊の術をかけ、絨毯を蹴るとふわりと身体が浮き、ラスを抱っこしたまま屋上へと着いた。


久々に来た屋上…

2年前、ここでコハクと結ばれて以来久々に来た屋上は相変わらず金色の花々に覆われていて、あちこちから甘い香りがした。


そして、その花の回りを飛び回る白と黒の妖精たち――


壺をベルトで固定させて腰に巻き付け、花の蜜を集めながら歌を唄っていた。


「ベルルの友人で、時々こうして蜜を集めに来てくれてるんだ。そのー、チビの胸をおっきくした蜜をさ」


「妖精さんだ!沢山居る!綺麗!可愛い!手に乗っけたい!」


鼻息も歩くにじり寄ろうとするラスを抱っこしたまま、飛び回る妖精たちの輪の中に入ると、後ろ抱っこをして花畑の真ん中に座った。


「妖精さん!こっち!こっち見て!」


「あら、ベルルが言ってたおチビさんね。魔王のハートを射止めたなんて大したものだわ」


白のふわふわのドレスを着た白妖精が呼びかけに応えてくれて、ラスの肩に留まるとラスの小指の爪程の壺を掌に乗せてくれた。


「でしょでしょ?コーは自慢の私だけの勇者様で、旦那様なのっ。…あ、まだ旦那様じゃないんだけど…」


「チビ…」


「!やだコーっ、お尻触んないでっ!なんもしないって言ったでしょっ?」


「こんっくらいいじゃん!爆発しそうなの我慢してんだから!」


――背中にはコハクの固い胸の感触。

腰には細くて長い指が。

耳元にはコハクの息遣いが。


そう、この場所ではじめて結ばれた時のことを思い出した。


「コー…2年前のこと、思い出しちゃった」


「ん。あん時のチビは最強で最高に可愛かった」


「…じゃあまたここで私を可愛くしてくれる?」


「もちろん」


家族を作るために――
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