魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
抱いた女の数など、もう覚えていない。


かたや赤い瞳は不気味がられ…

かたや、女たちには数知れず言い寄られ…

声をかけてきた女を片っ端から抱いた時もあった。


だが、虚しさが残るだけだった。


満たされるはずなのに、何故虚しさばかりが募るのか?

この中の誰かが俺を満たしてくれるはずなのに。

探しているものを、持っているはずなのに――


「コー…?どうしたの、難しい顔してる」


「え?あー、いや…ちょっとキンチョーしてるだけ。昔のこと思い出してた。ヤなやつ」


「大丈夫?頑張れコー」


…2年前もこうしてラスに励まされたことを思い出し、つい吹き出してしまうと、ラスの両頬を引っ張った。


「これから頑張るんだっつーの」


ラスを金色の花々の上に横たわらせ、真っ黒なシャツをがばっと脱ぐと、いつかの時のようにまたラスが目を逸らした。


「こ、コー、妖精さんたちが居なくなってるっ」


「ギャラリー居た方が燃えんのか?あ、わかったぞ。チビもキンチョーして…」


「してるもんっ!だってこんな…太陽がまだ出てるのに…恥ずかしいよ…」


「チビがここがいいっつったんだろー?……あれ…」


ラスが着ているローブの胸元の紐を解こうとした手は…小さく震えていた。


…ラスを抱く時は、実はいつもこうして緊張してしまう。


求めていたものを全て持っている完全なる者――

求められる喜びを与えてくれた女――

自分の手で壊しはしないかと、いつも怖くなって、手が震えてしまう。


「大丈夫だよ、コー。さっきは逃げちゃってごめんね。手…あっためてあげようか」


ふうふうと息を吹きかけてくれたラス。

コハクは1度大きく深呼吸をし、ラスの背中に手を入れて上体を起こすと、ぎゅっと抱きしめながら頬にキスをした。


「だいじょぶ。チビとする時、いつもキンチョーすんだ。ガキみたいだろ?」


「私だって…いつもしてるよ?ねえコー、下は私が脱がせてあげよっか」


「へ?!わ、おい、チビっ、や、やめろ!やめてー!」


追剥に遭ったかのような悲鳴を上げたコハクの手の震えは…止まっていた。
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