魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
この街は相変わらず美しい。
ホワイトストーン王国を崩壊させた男がこの街を作ったことをまだ信じられないでいるリロイは、鎧を外すとラフな格好になり、棚に並んでいたワインボトルを取り出すと、ひとりでグラスを傾けていた。
「…これでよかったんだ。これで…」
まだ2人が仲睦まじくしている姿を見るのは、少しだけせつない。
そしてティアラの婚約者…
フィリアから許可を得て街に下りて住民たちにクリスタルパレスの説明をしている間も、諦めがつかない表情で遠くから見守っていたこと…知っていた。
あんな年上の男に嫁いで、幸せになれるのだろうか?
ラスは好きな男の元に嫁ぐからいいとしても、ティアラは?
「お邪魔してもいいかしら」
「あ…ローズマリーさん…どうぞ、でもドアは少しだけ開けて…」
「ふふっ、わかってるわよ。街でおいしそうなチーズを売ってたから買ってきたわ。これもここの魔物が作ったんですって」
淡いピンク色の髪を頭の上で緩く結び、白のロングガーディガンを着たローズマリーは若く聡明で、美しい。
もうどの位生きているのかはわからないが、大賢者としての名は轟き、彼女に会いたがり、指南を求める者は多いが、あの水晶の森がそれを阻んでいる。
「ここはなんでも魔物が作っているんですね。悪の芽だけ摘むって…本当にできるんでしょうか?」
「多分コハクにしかできないと思うわ。ああ、もしかしたら何でも屋さんもできるかもしれないけど、あまり関心はないでしょうね」
――オーディンとローズマリーが深い仲かもしれない…
その疑問は隠し事のできないリロイの顔に現れ、ローズマリーは一口サイズに切ったチーズを頬張ると、脚を組んで背もたれに身体を預けた。
「寝たわ。それがどうしたの?」
「え…っ!い、いえ、どうということはないんですが…やっぱりそうでしたか。申し訳ありません、勘ぐってしまいました」
「コハクと何でも屋さんは特別なの。ふふっ、内緒よ」
“コハク”と名を呼んだ時、声色に特別な感情を感じた。
この人は…もしかして――
そう考え、リロイは考えるのをやめた。
ホワイトストーン王国を崩壊させた男がこの街を作ったことをまだ信じられないでいるリロイは、鎧を外すとラフな格好になり、棚に並んでいたワインボトルを取り出すと、ひとりでグラスを傾けていた。
「…これでよかったんだ。これで…」
まだ2人が仲睦まじくしている姿を見るのは、少しだけせつない。
そしてティアラの婚約者…
フィリアから許可を得て街に下りて住民たちにクリスタルパレスの説明をしている間も、諦めがつかない表情で遠くから見守っていたこと…知っていた。
あんな年上の男に嫁いで、幸せになれるのだろうか?
ラスは好きな男の元に嫁ぐからいいとしても、ティアラは?
「お邪魔してもいいかしら」
「あ…ローズマリーさん…どうぞ、でもドアは少しだけ開けて…」
「ふふっ、わかってるわよ。街でおいしそうなチーズを売ってたから買ってきたわ。これもここの魔物が作ったんですって」
淡いピンク色の髪を頭の上で緩く結び、白のロングガーディガンを着たローズマリーは若く聡明で、美しい。
もうどの位生きているのかはわからないが、大賢者としての名は轟き、彼女に会いたがり、指南を求める者は多いが、あの水晶の森がそれを阻んでいる。
「ここはなんでも魔物が作っているんですね。悪の芽だけ摘むって…本当にできるんでしょうか?」
「多分コハクにしかできないと思うわ。ああ、もしかしたら何でも屋さんもできるかもしれないけど、あまり関心はないでしょうね」
――オーディンとローズマリーが深い仲かもしれない…
その疑問は隠し事のできないリロイの顔に現れ、ローズマリーは一口サイズに切ったチーズを頬張ると、脚を組んで背もたれに身体を預けた。
「寝たわ。それがどうしたの?」
「え…っ!い、いえ、どうということはないんですが…やっぱりそうでしたか。申し訳ありません、勘ぐってしまいました」
「コハクと何でも屋さんは特別なの。ふふっ、内緒よ」
“コハク”と名を呼んだ時、声色に特別な感情を感じた。
この人は…もしかして――
そう考え、リロイは考えるのをやめた。