魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
足元をちょろちょろと走り回るフローズンは…人懐こくなっていた。

子犬程の大きさのフローズンが後ろ足2本で器用に立つと、ラスに抱っこをせがむように手を伸ばし、魔王、ご立腹。


「なにチビに抱っこせがんでんだてめえは。俺がされてえくらいだよ!」


「コーはおっきいから抱っこできないもん」


「できるし!膝枕希望!」


ラスを甘やかしたいし、時にラスに甘えたい魔王がふてくされ、フローズンの頭を1度撫でてやると医療室にあるような白くて長いベッドに横に座っって膝を叩いた。


「甘えん坊さんなんだから。膝枕してあげる」


「!お、お邪魔しまーす!」


自ら希望したくせに照れまくり、眼鏡を外すとラスの膝枕にあやかったコハクは、その太股のやわらかさにうっとり。

しかもラスが頭を撫でてくれて、こういう経験を持ったことのなかったコハクは…ゆっくり瞳を閉じた。


「今のうちに沢山チビに甘えとくんだ」


「?どうして?」


「だってガキができたら俺なんか相手にされなくなるだろ?今のうちに独占ー」


「??コーは旦那様なんだから相手にしなくならないなんて絶対ないよ。…コー?どうして太股撫でてるの?」


「撫でたいからー。そのちっこい奴らを退治したら本格的に再建プロジェクトスタートだ。俺が1番頑張るだからさ、チビ、そこだけは覚えとけ!」


コハクに念を押されて頷き、コハクの左手薬指に嵌まっているお揃いのガーネットの指輪をちょんと突つくと、その手を口元に引き寄せられて、薬指をきゅっと握りこんだ。


「ちょっと傷がついたって言ってたよな。魔法見せてやるよ」


そして息を吹きかけ、手を開くと…指輪はコハクから贈ってもらった時のように輝きを放ち、ラスを喜ばせた。


「わあ、ありがとうコー!…?コー、どうして私の上に乗るの?」


「乗りたいからー。チビ、俺の目を見ろよ」


――邪眼と呼ばれ、恐れられた赤い瞳――

だがラスはひたとグリーンの大きな瞳で見据えてくると、誰もが見惚れずにはいられない極上の笑顔で頬に触れてきた。


「コーの瞳、綺麗。大好き」


「俺もチビ大好き」


そして訪れる――危機。
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