魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
地下の実験室には誰にも近寄らないようにしているので、思う存分ラスをべたべた触っていると…


「ああ、ここに居たんですか。探しましたよ」


「ちっ、なんだよ今大事なとこ…」


「そのようには見えませんが。ラス王女、ティアラ王女たちが捜していましたよ」


「えっ、ほんと?コーどいてっ」


「えー?!あー、もーっ!」


とことん万年発情期の魔王がコーフンしかけていたがオーディンに邪魔され、身を起こすとラスが身体の下からするりと這い出て、フローズンを抱っこして出口に消えて行った。


そしてベッドに寝そべると片肘をつき、邪魔者オーディンをぎらりと睨んだ。


「俺とチビがここに居るって知ってただろが」


「いいえ、知りませんでしたよ。それよりコハク様、フローズン如きで手こずっているんですか?あなたの魔法で一掃できるでしょうに」


隻眼のグレーの瞳は笑んでいるままだったが、コハクはオーディンの瞳をじっと見つめた。

時々現れては傍に侍り、時々居なくなっては数年、十数年のスパンで行方をくらます。


この男だけが、自分の全てを知っている。

ラスにも話したことのないことまで、全部全部知っている。


隠し事をしたとしてもすぐに看破されてしまうのだから、隠す意味はない。


「魔法か。あんまり威力のあるすげえの見せたら…チビが怖がるじゃねえか」


「あなたの中心がラス王女なのはよくわかっていますが、復興を速めればその分早く結婚できるんでしょう?」


ウォッカを注いだグラスを手渡され、それを一気に飲むと、ラスの笑顔を想った。



「俺とチビは永遠を生きる。だけど小僧やボインたちは人としての寿命を全うして死んで行く。俺は鬼じゃねえんだ、そんくらいの時間は持たせてやりたい。これで納得したか?」


「…ええ納得です。でももし…ラス王女があなたの傍から姿を消したら…どうしますか?」



その問いかけは、予言のように聴こえた。

だがコハクはその予言めいた言葉を打ち消すように、言葉に力を込め、跳ねのけた。


「チビが俺の傍から居なくなるわけがねえ。さっきからなんなんだよ、うぜえんだよ」


「いいえ、別に」


含み笑い。
< 211 / 728 >

この作品をシェア

pagetop