魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
毛むくじゃらだった太い腕が細くなり、身体のラインもどんどん細くなり、金の瞳はそのままに人の形に戻ってゆくビーストを口を開けて見ていたラスを後ろからひょいと抱っこしたコハクは盛大な舌打ちをした。


「ちっ、あのライオン野郎…なにどさくさに紛れてチビに告ってんだよ」


「見てコー、ビーストさんが人間に戻った!髪が金…瞳も金…」


金の髪は勇者の証。

ラスは滅法金の髪に弱く、ぎくっとなったコハクはラスがビーストに駆け寄らないように抱っこしたままソファに座ると、光が収束して自身の手を見つめているビーストに声をかけた。


「残念だけどチビは俺のもの!それにほら、回り見てみろよ」


「あ…家具たちが…戻っていく…!」


ビーストと共にクローゼットや箒にされたというメイドや執事たちがぞろぞろと部屋に入って来て、ビーストを見つけると歓声が上がった。


「王子!呪いが解けたんですね!」


「ああ。…お前たちには今まで迷惑をかけた。…すまない」


年配で白髪まじりのオールバックの執事が感極まってすすり泣くと、元々ビーストに何の関心もないコハクは指を鳴らしてリロイを呼ぶとラスを腕から下ろした。


「俺はちょっと用があるから先に外に出てろ。全員だ」


「わかった」


ラスが嬉しそうにリロイの手を握ったのはいらっとしたが、最後にオーディンが出て行こうとした背中に声をかけた。


「馬車にローズマリーが残ってる。ちゃんと話をしてやれ」


「ふふふ、気苦労が絶えませんね」


そして意外と美形なビーストに向き直るとテーブルに細く長い脚を投げ出し、偉そうに腕を組んで口角を上げて笑いかけた。


「チビが世話になったな。独りだったら泣いてたかもしれない」


「…俺はなにもしてない。むしろ…救われたのは俺の方だ」


「そっか?まあとにかく礼を言う。結婚式にも招待してやるから来いよ」


そして腰を上げるとぱちんと指を鳴らし、閃光に包まれると、埃を被っていた家具や床が新品のように綺麗になり、執事やビーストが唖然としているとコハクは悠々と部屋を出て行った。


――綺麗になったのは城の中だけではなく、外もだった。

ラスたちはちょうど城外に出たところで、城に巻き付いていた蔦が一瞬にして消えたのを見て、ラスが微笑んだ。


「コー…」


優しい人よ。
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