魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「これを持って行け」


帰り際ビーストから手渡されたのは、カゴ一杯のオレンジだった。

総出で見送りをされ、せっかく仲良くなれたのに離れるのは悲しかったが…クリスタルパレスに戻って復興作業を続けなければならない。

後ろ髪引かれる思いでビーストの屈強な身体に抱き着くと、すぐ傍で舌打ちする音が聞こえた。


「もお、コー」


「早く行こうぜ。チビの体調が心配なんだって」


何度もラスの腕を突いて気を引こうとするコハクの様子があまりにも可愛らしく、ついビーストが噴きだすと早速詰め寄られた。


「なんだてめえ、今俺を笑ったな?」


「い、いや、なんでも。ラス…この男に飽きたら連絡を。お腹の子も俺の子として愛してやる」


「ああ?」


人の姿に戻ったというのに金の髪は背中半ばまであるウェーブがかった髪で、無精ひげがあり、いかにもワイルドという風体だが…コハクに脅されると降参ポーズを取りながら1歩退いた。


「オレンジをありがとう。結婚式の日が決まったら連絡するね。絶対会いに来てね」


「ああ。また会おう」


すると早速ラスをさっと抱っこしたコハクが馬車に乗り込み、空を駆け上がった。


ビーストはいつまでも馬車を見送っていた。


――そして馬車の中では魔王のデレが止めどなく、ラスが肩を押して離れたがっていた。


「コー、暑いから離して」


「やだね。チビは目ぇ離したらすぐどっか行っちまうし、転んだりしたら大変だろ?もうチビだけの身体じゃないんだからな」


「そうだけど…コー、鼻息がうるさい」


相変わらずラスからつれなくされて逆にぞくぞくしてしまったヘンタイ魔王は、ラスの頬をぺろぺろ舐めると呆れ顔の面々を完全無視してラスを抱っこし直した。


「そういえばクリスタルパレスの周辺に人が集まり始めたの。今名簿を作ってるんだけど、先着順で街に住んでもらおうと思うんだけど、どう?」


「名簿っ?楽しそう!ねえコー、手伝ってもいいよね?」


「えー!?安定期までじっとしててくれよ、頼むから」


真面目な顔でお願いされてしまうと我が儘を押し通すわけにもいかずにしゅんとなってしまい、慌てたコハクは仕方なくため息をついた。


…所詮ラスには適わないのだ。

可愛い可愛いお姫様。
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