魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
クリスタルパレスの周辺には所狭しとテントが張られ、ちょっとしたベースキャンプ状態になっていた。

またよく見ると、グリーンリバーから派遣されたエプロン姿の魔物たちがお茶や食べ物を運んだり給仕係として働いているのも見えた。


嬉しくなったラスがまた身を捩らせて喜んでいると空中庭園に着き、ラスを抱っこしたコハクとデスが降り立った。


「わあ…っ、すっごく綺麗になってる…!すごい…」


「小僧が頑張ったんだ。俺が地下に籠もってる間は小僧が全指揮を執った。あいつらには小僧の言うことを聞くように言っといたからさ」


「リロイが?すっごく頑張ったんだね…だってもう地面も割れてないし氷も全部溶けてるし…」


「後は家だなー。半分以上が傷んじまってたから今はそういう家を倒して新たに作り直してる。わ、おいチビっ」


嬉しさのあまりコハクの頬にちゅっちゅとキスをすると、ラスからの迫りに滅法弱い魔王は可愛いお尻を撫でながら空中庭園から叫んだ。


「幸せーーー!」


「……………」


突っ込みもせず、ただ黙ってそんなコハクを見ていたデスは額に手を翳すと前方の遥か遠くを見て呟いた。


「………ケルベロスが居る」


「あー、ここずっと地獄に居なかったろ?こっちに呼んで乗り物にしてたんだ。おかげで作業もはかどったぜ」


だがラスはケルベロスを見つけることができなず、コハクの髪に指を潜らせてキスできそうな距離で笑いかけた。


「コー、ワンちゃんに会いたいな」


「だーかーらー、安定期に入るまでは…」


『チービー!』


『ベイビィちゃん』


…目を上げると、ラスの元に我先に駆けつけようとするドラちゃんとケルベロスが空中でもみくちゃになりながら突進してくると、頭上で喧嘩をはじめてしまった。


『気安くベイビィちゃんの愛称を呼ぶな』


『お前こそ何がベイビィちゃんだ!チビと知り合ったのは僕の方が先なんだからな!』


「おいお前ら…“チビ”も“ベイビィちゃん”もやめろ」


「ドラちゃん!ワンちゃん!撫でてあげるから降りておいでっ」


『わーい!』


決して手懐けることが不可能とされるケルベロスとドラちゃんを完全に躾けてしまったラスに脱帽したコハクは苦笑しながらデスの肩を抱いた。


「な、俺のチビはすげえだろ?」


デスは無言で頷いた。
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