魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「ラス王女だ…」


「なんとお綺麗な…それにあの男は何者だ?」


ラスを抱っこしたコハクがベースキャンプに現れると、あっという間にその場はどよめきに支配された。

こうして大勢の移民の前に現れたのはこれがはじめてで、普段は王族を目にすることのできない者たちがここまで観光ついでに来たものも居る。

よって、ラスを目撃できた移民たちはラスの可愛らしさに見惚れ、ラスの一声を今か今かと待っていた。


「コー、みんなとお話したいから降りてもいい?」


「だめー。絶対降ろさねえからな。今日は姿見せるだけでいいの!」


高く透き通るような声が澄み渡り、コハクとラスの回りからさざ波のように人々たちが足を折ってひざまずいた。

驚いたラスがコハクの首に抱き着いていると、すぐ傍に居た茶色の髪の半ズボンの6歳程の男の子がラスを見上げて全開の笑顔を向けた。


「わー、本物のお姫様だー!」


「僕もここに住みたいの?お母さんは?」


問うとすぐ傍で頭を下げていた30代ほどの顔がそっくりの女が男の子の手を引いて膝に座らせ、ラスを見上げた。


「わ、私の子供です」


「そっかあ。先着順で受け付けてるみたいだけど住めそう?ご飯ちゃんと食べてる?…くしゅんっ」


「チビ!戻ろう、早く戻ろう、今すぐ戻ろう!」


超過保護のコハクが踵を返すとすぐ後ろに居たデスとぶつかり、デスが赤くなった鼻を撫でながらきょろりと辺りを見回した。


「どうした?」


「…………死相が出てる人間は居ない」


「不吉なこと言うなっつーの。ワン公、背中に乗せろ」


『わーい!チビ、早く乗って!』


「コー、私まだ全然お話してないよ」


「だから今日は顔見せるだけ!体調がいい時はここに来ていいからさ。頼むから俺の言うこと聞いてくれよ」


…赤い瞳には切実な光で満たされていて、本気で心配してくれているのだとわかったラスは人々が息をひそめて見守る中コハクの唇にちゅっとキスをして皆をどよめかせた。


「うん、わかった。コー、心配してくれてありがと」


「あったりまえだろ」


ケルベロスが伏せをし、コハクがラスを乗せて後ろに跨ると振動が身体に伝わらないようにケルベロスに魔法をかけ、城へ戻った。


人々は歓声を上げ、ラスたちに手を振った。
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