魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
クリスタルパレスの1番奥にある城に着くと真っ先にコハクが向かったのは、王と王妃が使っていた部屋で、キングサイズの豪華なベッドにラスを座らせると両手をぎゅっと握ってひざまずいた。


「ちょっと横になってろ。吐き気は?だるいか?なんか飲み物持って来るからじっとしてろよ」


「どこも悪くないよ。でもコーが心配するから寝てるね」


ころんと横になると安心したコハクはラスの髪にキスをして手を振ると、入り口に居たデスと一緒に部屋を出て行った。


妊娠…

お腹に赤ちゃんが居ることが未だに信じられなかったが、医者に診てもらったのだから確実なのだろう。

グリーンリバーの城で子供の笑い声に包まれながら過ごす日々は一体どんなものだろうか?

想像だけでもとても楽しくなって布団をかぶってじたばたしていると、誰も居ないはずの部屋に女性の高い声が響いた。


『ラス…』


「え?」


布団から這い出ると、いつも持ち歩いているショルダーバッグから青白い光が立ち上り、光がゆらゆらと揺れるとだんだん人型になってきて、ラスはその女性に見覚えがあり、声を上げた。


「あ、コーのお母さんだ」


『子供ができたのね。嬉しいわ…本当に嬉しい』


感極まった震える声でラスに手を伸ばし、くしゃくしゃになった髪を撫でて元に戻してくれると、ラスは腹を撫でながらにこりと笑いかけた。


――この水晶の森の女王は、コハクの母ともいえるべき存在。

“自分は水晶の塊のようなもの”とコハクが告白したように、液体状の水晶をミルク代わりに飲ませてコハクを助けてくれた存在。

この女王が助けてくれなかったら、コハクは今生きてはいないのだ。


「お腹触りたい?触ってもいいよ」


『私が子供にどんな影響を及ぼすかわからないからやめておくわ。あの子はまた優しくなった…。そしてこれからもっと過保護になるわよ」


「うん、コーは元々優しいけど、親馬鹿なパパになると思うの。今飲み物を作りに行ってくれてるからお母さんも待ってあげてて」


“お母さん”と言うと、半透明の姿の女王は嬉しそうに微笑み、ゆっくりと首を振った。


『もう戻るわ。この国ももう少しで元に戻る。そうすれば、私が守ってあげられる。コハクの願いを叶えてあげられる』


女王はラスの頬を撫でた。

まるでコハクにするかのように――
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