魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
その頃クリスタルパレスの外のベースキャンプではリロイが皆に囲まれてもみくちゃになっていた。


…最近いつもそうだ。

コハクが地下室に籠もり、全指揮を任されてがむしゃらにやってきた結果…何やら皆から敬われるようになってしまっていた。

食事や暖房機器の提供、名簿リストの作成、移民同士の喧嘩の仲裁…時に結界外に現れて皆を脅かせる魔物を討伐したり、毎日がせわしない。


「リロイ様!森の奥で魔物の影を見ました。こちらに来るのでは…」


「わかりました、皆には結界から出ないように触れ回って下さい」


いつの間にか自警団のようなものもでき、腕にお揃いの白い布を巻いた男たちが魔物の襲来を触れ回り、外で炎を囲んで談笑していた人々は皆慌ててテントに入り、身を隠した。


「ティアラはここに。行って来ます」


「はい、気を付けて。怪我をしたら私が治しますから」


にこっと笑い合い、すらりと剣を抜いたリロイの後ろ姿は頼もしく、ティアラが胸に手をあてながら見守っていると、20代後半の自警団のリーダーがひそりと声をかけてきた。


「先程ゴールドストーン王国のラス王女がここへ来たそうです。リロイ様が同席されず、恐ろしく顔の整った真っ黒な男がラス王女を抱いていたそうですが…その…リロイ様は…」


――王族を守護すべき白騎士が国の王女と別行動を取っているのはおかしなことだ。

現にリロイはまだゴールドストーン王国の鎧とマントを着用し、“ドラゴンテイマー”としての名も轟き、いずれはラスと結婚するのだと皆が信じて疑っていなかったのだが…


「…それはリロイから直接聞いて下さい。私からはなんとも…」


「ですがティアラ王女はいつもリロイ様とご一緒なのでもしかしたらと……も、申し訳ありません、妙な詮索をしてしまいました」


律儀な男が頭を下げ、ティアラが曖昧に微笑んでいるとリロイが戻ってきた。

怪我はしていないらしく、まっすぐティアラの元に向かうと剣を鞘に収めてティアラの肩を優しく抱いた。


「少し手こずりましたが終わりました。一旦城へ戻りましょう」


「はい。リロイ…先程ラスと魔王がここへ来たそうです。…行かなくてもよかったのですか?」


問うとリロイの脚が止まり、逆にきょとんとされて笑われた。


「いいんです。影が傍に居ますから」


だから、大丈夫。
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