魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ナイフとフォークを手に見よう見まねで食事をしているデスは可愛らしく、まるで弟ができたような気分になったラスは甲斐甲斐しくデスに食べ方を教えてやっていて、魔王の機嫌も身体も斜めになっていた。


「なあチビ」


「デスさんは左利きなの?じゃあナイフは左手でフォークは右手だね。順番なんか気にしなくていいから沢山食べてね。お酒飲む?何がいい?」


「なあってば、チビ」


「私もお酒飲みたいな、ちょっとだけ飲んじゃおうっかな」


「駄目!駄目駄目駄目駄目!チビが酒飲むとベビーも酔っぱらうだろが!絶対駄目です!パパは許しませんよ!」


ようやくコハクの言葉が耳に入ったラスがぷうっと頬を膨らませると、くすくす笑っていたティアラが目元を緩ませながら声をかけてきた。


「赤ちゃんが生まれるのは冬なんでしょ?手袋とか靴下とか手編みして作ってあげたら?もしよかったら私が教えるけど…」


「え、ほんと?私…不器用だけど大丈夫かな」


ラスが眉を下げて不安そうな声を上げると、コハクが嬉しそうに笑い、ラスの髪をひと房掬ってキスをした。


「大丈夫だって。ナイフなんか握ったことねえチビが料理できるようになったんだからさ。ボイン、グッジョブ!」


「私も教えてあげられるわよ」


「私もできる」


女性陣が次々と声を上げるとラスの顔はますます輝き、誰よりも早く完食したデスの小指をきゅっと握った。

デスが城に滞在するのは今夜だけだから、と自身に言い聞かせ続けていたコハクは、ラスの前で大人の余裕を見せたくて文句を言わずに横目で見ていると、あろうことかデスがラスの小指に小指を絡めて一転、またデスのフードを剥ぐと、デスが両手で顔を隠した。


「………眩しい」


「隠したって骨と骨の間から顔が見えてるぜ。お前なあ、俺のチビに気安く触ると痛い目に…」


「コー、喧嘩は駄目。お友達なんでしょ?」


「でもさあ!……まあいいや、俺は大人、大人…」


――時にラスはコハクの反応をわかっていて、コハクをこうしてからかうのが好きだ。

大人のようで子供、子供のようで大人な未来の旦那様の膝に乗っかったラスは、コハクの頭を優しく撫でて有頂天になる一言を耳元で囁いた。


「コーが1番だよ」


「…この小悪魔め!可愛いんだよ!」


掌で、ころころ。
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