魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
デスの胸ぐらをつかんだ時、ラスが不安そうな表情で俯いた。

伏し目がちになり、金の睫毛が震えているのを見たコハクはデスから手を離すとラスを抱っこしてベッドに移動させると横たえさせた。


「すぐ戻ってくっから寝てろよ。な?」


「…うん。コー…赤ちゃんが…どうかしたの?」


「どうもしねえって。あったかい飲み物持って来てやっから待ってろな。大人しくしてるんだぞ」


「…うん、わかった」


枕を抱きしめて顔を隠したラスの傍から離れるのはいやだったが、コハクは不安を植え付けたデスの首根っこを摑まえて部屋の外へ引きずり出すと、隣の自室に連れ込んでドアの鍵を閉めた。


「何を見た?何を知った?ベビーが…チビがどうかしたのか?言えよ」


「……そういうのは教えられない」


「お前があんな空気にしたんだぞ。さっきまで明るかったチビが塞ぎ込んだのはお前のせいなんだからな!何を見た!?言うまで帰さねえぞ!」


がくがくと肩を揺さぶられ、揺すられるがままになっていたデスはコハクの右腕を掴み、顔を上げた。


コハクの瞳は真剣そのもので、唇を噛み締めすぎたせいか血が滲み、なお掴んだ肩を離さない。


なんとしてもデスの口から何を知り、何を見たのか聞き出すつもりだったコハクは瞬きもせずにデスを見つめ、デスはコハクの赤い瞳にたゆたう魔力の波に思考を奪われそうになると顔を背け、フードを深く被った。



「………可愛かった」


「は?チビのことか?…ベビーのことか?どっちなんだよ。どっちともか?」


「…………後であの子と2人きりにさせてほしい。そしたら…なんとかする」


「なんとか?…やっぱり…危ないんだな?チビか…ベビーが…」


「……………なんとかする。楽しかったお礼…する」



珍しくよく喋るデスを信用するしかない。

デスが動かなければ…ラスかお腹の子に何かあることははっきりした。


やっと家族ができるのに。

やっとラスとの間にずっと欲しかった子供ができたのに。


…信用するしかない。


「…わかった。俺は席を外すから終わったらここに来い。……頼んだ」


歯を食いしばったコハクは今にも泣きそうだった。


デスが知っているのは、擦れたコハクの姿だ。

今目の前に居るコハクは、あの時とは全く違う。


「……任せて」


力を込めて、約束をした。
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