魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
真っ黒だった髪は真っ白になり、真っ黒だった瞳は青い色になった。


赤い唇と青い瞳が鮮やかな色を醸し出し、骨だった手には肉がつき、真っ白でいてすらりと長い指はラスの腹に触れるか触れないかの位置で止まり、白い光を放ち続けた。


「ん……」


「………君のお母さんを…苦しめないようにね」


手を離すと椅子に座り、掌を見つめた。

するとラスの腹のあたりから白く小さく丸い光がすう、と出てくると、デスの掌でふわふわとたゆたった。

その正体を知っているデスは本来触れられないその光を撫でて儚く微笑んだ。


これは…

この白い光は、コハクとラスの子供だ。

初産で苦しんで死ぬラスの命と共に鎌で刈り取る予定だった命だ。


生と死は自然の理。

それを自身の判断で左右することは本来許されない。

…ただ、創造神は全てを見ているだろう。

この行動が間違っていれば、罰を受けるだろう。

だがこれでいい。

これで…


「………お戻り。ちゃんと生まれておいで」


言葉を理解したのか白い光…ラスとコハクの子供はラスの腹に戻り、立ち上がったデスは掌にじっと視線を落とした。


…再び骨の手に戻ってしまった。


死を与える時は黒き姿に。

生を与える時は白き姿に。


白い時の姿を見たのは長く生きていてこれが最初のことだったが…黒い自分は好きじゃない。

暗い性格の自分も、好きじゃない。


いつか役目から解放される時が来たら、この骨の手ではなく…肉のついた手で誰かを抱きしめてみたい。


「………無理、かな」


独りごち、穏やかな表情ですうすうと寝ているラスを1度ちらりと見た後部屋を出て、待ち構えていたコハクにすぐに詰め寄られた。


「デス…ち、チビは…」


「…………大丈夫。運命を…変えてきたから」


「運命?やっぱりチビは……」


「………大切にして。そうすれば…ちゃんと生まれて来れる」


告げた瞬間、コハクから思いきり抱きしめられた。

背骨が折れてしまうのでは、というほどに強く強く抱きしめられ、耳元で震える声が響いた。


「ありがとな…」


「…………うん」


身体を離すと少し長い前髪が表情を隠していたのでどんな顔かはわからなかったが、見なくてもわかっていた。


「……大切にね」


繰り返した。
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