魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
せっかく会えたと思ったら突然デスが姿を消し、ラスは馬車から降りてデスを捜そうとしたがコハクに止められた。


「あいつも忙しい奴だからさ、長く留まってくれた方だぜ。また呼び出してやるから。な?」


「うん…。あんまり話せなかったのが残念だったけどまた会えるのなら我慢する。コー、行こ」


実はデスのことよりもカイをいかに丸め込もうかと真剣に悩んでいたのだが、結局考えがまとまらずに馬車に乗り込み、速度を上げるとラスを膝に乗せて言い聞かせた。


「多分あいつ本気で怒るからさ、俺がカイと先に話つけるからチビはソフィーときゃっきゃっしてろよ」


「うん、わかった。もしお父様がワーッてなったらキャーッて言ってね。すぐに助けに行くから」


「ぶふっ、なんだよその擬音語は。でも伝わった。サンキュ」


それからは2人で窓から景色を見て、高いライナー山脈を越えて大陸を横断すると、ひときわ明るい結界に包まれたゴールドストーン王国のゴシック式の城が見えた。


ドラちゃんやケルベロスで乗り付けるのをやめたのは、カイに誠意を示したいから。

いつになく真面目な表情で無駄口も叩かないコハクが面白くなってきたラスは馬車が城の庭に下り立つと抱っこして降ろしてくれたコハクのわき腹や背中をくすぐりまくった。


「あ、危ねえって!チビを落とすところだったじゃんかよ!」


「だってコーがあんまり喋らないし笑わないから。変だよコー。緊張してるの?」


首を傾げながら顔を覗き込んできたラスは心底不思議そうにしていて、瞼にちゅっとキスをするとあっという間に白騎士団や近衛兵に囲まれてしまい、警戒態勢の彼らを顎で差した。


「ほらチビ、挨拶。元気よくな」


「うん。みんな、ただいまっ。元気にしてた?悪い人たちは襲って来たりしてない?街の人たちはみんなお腹いっぱいご飯食べられてる?」


――ラスはゴールドストーン王国の至宝。


美しいことで有名だったソフィーと、勇者の素質を全て備え持ったカイとの間に生まれ、2人から最高のDNAを受け継いたプリンセスは…魔王と呼ばれて恐れられていた男の腕の中に居た。


それでも声をかけられると嬉しくて、皆が膝をつくとまるで自分が傅かれたかのようにコハクがふんぞり返り、彼らの波を縫って歩くと城の中へと入った。


…様々な覚悟をして。
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