魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
カイは優男だが、元々大人しい男ではなかった。

だからこそ傭兵という道を選び、魔王の出現によって名乗り出てパーティーを組んで…今の地位に在る。


――現に今コハクの目の前に居るカイは、はじめて対峙した時のように瞳は尖り、ゆっくりと腰を上げた。


「私のプリンセスが…妊娠?貴様…」


「“私”だと?昔みたいに“俺”って言えよ。俺をぶち殺したいんだろ?だけど俺がチビを抱いたのはもう2年前のことだ。お前んとこの白騎士小僧がとち狂って俺を刺した直前のこと。そんでチビが俺を迎えに来てくれた。…まさか俺が何もしないと思ってたのか?」


挑発したが、カイは両腕をだらりと下げて一見無防備に見えた。

…が、玉座に立てかけてあったのは、例の王国の国宝…魔法剣だ。


3度、コハクの命を狙って立ちはだかる。


「…殺すか?それで俺は死ねるか?死んだ後、チビがまた廃人になってもいいのか?聴いたぜ、チビが人形みたいになったって。また繰り返すか。お前と俺はそういう運命なのか?」


「…俺はお前が手加減したことを知っている。お前は死にたがっていた。俺は屈辱を感じた。プライドを傷つけられた。だが世界のためにお前を倒す他なかった。お前は…悪い奴には見えなかった。だが…ラスに取り憑くだけではなく、妊娠だと?」


一気に部屋の空気が下がった気がして、一歩後ずさった時…剣の風圧が髪をなぶって通り過ぎた。

元々からして避けるつもりはなかったのだが…つい身体が動いて避けてしまい、コハクは降参ポーズを取って瞳を閉じた。


「お前には何されても仕方ねえ。俺は不死身…だと思うから、何度刺したって切り刻んだっていいぜ。そりゃ痛いし切り刻まれたら復活すんのにまたどの位かかるかわかんねえけど…やりたいならやれ。だけど俺が生き返ったら…その時はチビは必ず貰い受ける。約束しろ」


――カイは苦悩した。

ラスが人形のようになった2年間の間、ラスに会えたのは片手で数える程だったこと…

天真爛漫だった子はその2年間で一気に大人になり、恋に身も心も焦がしていたこと…


コハクを殺せば…または引き離してしまえば、一生許してはもらえないだろう。

ひとつまちがえば後追い自殺する可能性だって拭い切れないのだ。


子を身籠ったまま――


「…お前を殺したい」


「だからやれって」


…殺せるわけない。
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