魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
カイがラスを抱っこして髪を撫でると、親子と言えどもべたべたするのが許せない魔王はラスの腕を引いて唇を尖らせた。
「こっち来いって」
「やっ。ねえお父様、もうコーと喧嘩しちゃったの?どうしてあの剣が転がってるの?もうこの剣は持ち出さないで。絶対駄目なんだから」
コハクを2度も殺しかけた魔法剣――
国宝と言えどもラスは2年前からこの剣が大嫌いになった。
だが2年間…聖石の間に飾られた魔法剣を見に通ったのは、自害を考えていたから。
カイがこの剣を持ち出してコハクを傷つけようとしたのは明白で、カイの腕から逃れたラスは無言でコハクの腰に抱き着いた。
「コー…大丈夫?」
「だいじょぶ。ちょっと首切られたけどな」
ぱっと顔を上げたラスが腕を伸ばしてコハクの両頬を挟み、引き寄せた。
すると確かに右の首筋には切れた痕があり、僅かに血が滲み出ているのを見つけたラスは無言で抱っこをせがむと抱き上げてもらい、一生懸命に傷跡をぺろぺろと舐めはじめて魔王、爆発寸前。
「チビ!コーフンして色々出る!」
「我慢してっ。痛いでしょ?でもぺろぺろすると治るからじっとしてて」
カイはコハクとラスのやりとりを腕を組んで聴いていたが、玉座に戻ると力なく座りながら魔法剣を玉座に立てかけた。
「ラス、今日は泊まって行ってくれるね?ソフィーに君が妊娠したことを話さなければ。きっと…」
“きっと、卒倒するよ。”
――そう言いかけてやめると、今度は元気がなくなったカイのことが心配になったラスは腕から下ろしてもらい、カイの膝に上り込んだ。
「お父様…嬉しくないの?私に赤ちゃんができたこと…喜んでくれないの?」
みるみるしゅんとなり、くしゃりと顔を歪ませたラスに焦ったカイはラスを抱きしめ、頭を撫でて言い聞かせた。
「そんなことはないよ。君が幸せになってくれることが私たちの幸せなんだ。…おめでとう、ラス。これからはもっと身体を労わらないとね」
「うんっ。良かった…お父様に反対されたらここを出てかなきゃ行けないと思ってたから…」
自らの意志で王国を出て行くのと、追い出されるように出て行かなければいけないのは全く意味が違う。
…国も家族も愛している。
だが最も愛しているのは、心配そうにずっとこっちを見ている赤い瞳の男。
身体を、労わらなければ。
「こっち来いって」
「やっ。ねえお父様、もうコーと喧嘩しちゃったの?どうしてあの剣が転がってるの?もうこの剣は持ち出さないで。絶対駄目なんだから」
コハクを2度も殺しかけた魔法剣――
国宝と言えどもラスは2年前からこの剣が大嫌いになった。
だが2年間…聖石の間に飾られた魔法剣を見に通ったのは、自害を考えていたから。
カイがこの剣を持ち出してコハクを傷つけようとしたのは明白で、カイの腕から逃れたラスは無言でコハクの腰に抱き着いた。
「コー…大丈夫?」
「だいじょぶ。ちょっと首切られたけどな」
ぱっと顔を上げたラスが腕を伸ばしてコハクの両頬を挟み、引き寄せた。
すると確かに右の首筋には切れた痕があり、僅かに血が滲み出ているのを見つけたラスは無言で抱っこをせがむと抱き上げてもらい、一生懸命に傷跡をぺろぺろと舐めはじめて魔王、爆発寸前。
「チビ!コーフンして色々出る!」
「我慢してっ。痛いでしょ?でもぺろぺろすると治るからじっとしてて」
カイはコハクとラスのやりとりを腕を組んで聴いていたが、玉座に戻ると力なく座りながら魔法剣を玉座に立てかけた。
「ラス、今日は泊まって行ってくれるね?ソフィーに君が妊娠したことを話さなければ。きっと…」
“きっと、卒倒するよ。”
――そう言いかけてやめると、今度は元気がなくなったカイのことが心配になったラスは腕から下ろしてもらい、カイの膝に上り込んだ。
「お父様…嬉しくないの?私に赤ちゃんができたこと…喜んでくれないの?」
みるみるしゅんとなり、くしゃりと顔を歪ませたラスに焦ったカイはラスを抱きしめ、頭を撫でて言い聞かせた。
「そんなことはないよ。君が幸せになってくれることが私たちの幸せなんだ。…おめでとう、ラス。これからはもっと身体を労わらないとね」
「うんっ。良かった…お父様に反対されたらここを出てかなきゃ行けないと思ってたから…」
自らの意志で王国を出て行くのと、追い出されるように出て行かなければいけないのは全く意味が違う。
…国も家族も愛している。
だが最も愛しているのは、心配そうにずっとこっちを見ている赤い瞳の男。
身体を、労わらなければ。