魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクとラスの姿は人々に笑顔を与えた。
確かにコハクはある種目が離せない男だし、ラスは目が離せないほどに可愛らしい。
赤い瞳は不吉の象徴として信じられていたので、人々が気にしていたのはその点で…露骨にコハクの瞳のことを揶揄する者も在った。
だがラスはそんな声が聴こえる度にコハクの瞼にキスをして揶揄した者に笑いかける。
“この人が私の勇者様なのよ”という想いをこめて。
「コー、もう帰ろっか。女の子たちがコーばっか見てるからやだ」
「はああ?それ言うんならヤロウ共がチビばっか見てるからそれがヤなんだけど!じゃあ帰るかー。お前らもだからな」
本当は明け方までコロニーに残ろうと思っていたリロイだったが、ティアラにマントを掴まれて見下ろすと、唇を噛み締めて首を振っていた。
…心配してくれていることに感謝しつつ、コハクの口笛を受けて上空を飛んでいたドラちゃんとケルベロスが舞い降りてくると、ティアラの手を引いてケルベロスの背に乗った。
おかしなことだとは思っている。
守らなければならないラスはコハクに抱っこされていて、自分は他国の王女をエスコートしているのだから。
「…そろそろ陛下にもはっきり申し上げなければ」
「え?今何か言いましたか?」
「いいえ、何も。じゃあ行きましょう」
飛び立つ直前、ドラちゃんが大きく咆哮した。
夜になって結界外で活発的になっている魔物たちを牽制した咆哮で、最強の種のドラゴンに心を折られた魔物たちはすごすごと森の奥の住処へと引き返してゆく。
人々に手を振られながらコロニーを後にして、クリスタルパレス内で夜になってもせっせと家を建てているグリーンリバーから派遣したエプロン姿の魔物たちに手を振ってからグリーンリバーに戻った。
「デス、こっちに来て。あのね、考えたの。その手のこと」
「………」
部屋に戻ると、ラスがドレッサーの中をごそごそし始めて、コハクはやきもちを妬きながらもラスの隣でドレッサーを覗き込んでいた。
「本当はコーに似合うかなって思って用意してたんだけどデスにあげるね」
「俺のために用意してたんなら俺が使うし!」
「コーにはまた似合うの用意してあげるから。あったあった」
ラスが得意げに手にしたのは、真っ黒なレザーグローブだった。
確かにコハクはある種目が離せない男だし、ラスは目が離せないほどに可愛らしい。
赤い瞳は不吉の象徴として信じられていたので、人々が気にしていたのはその点で…露骨にコハクの瞳のことを揶揄する者も在った。
だがラスはそんな声が聴こえる度にコハクの瞼にキスをして揶揄した者に笑いかける。
“この人が私の勇者様なのよ”という想いをこめて。
「コー、もう帰ろっか。女の子たちがコーばっか見てるからやだ」
「はああ?それ言うんならヤロウ共がチビばっか見てるからそれがヤなんだけど!じゃあ帰るかー。お前らもだからな」
本当は明け方までコロニーに残ろうと思っていたリロイだったが、ティアラにマントを掴まれて見下ろすと、唇を噛み締めて首を振っていた。
…心配してくれていることに感謝しつつ、コハクの口笛を受けて上空を飛んでいたドラちゃんとケルベロスが舞い降りてくると、ティアラの手を引いてケルベロスの背に乗った。
おかしなことだとは思っている。
守らなければならないラスはコハクに抱っこされていて、自分は他国の王女をエスコートしているのだから。
「…そろそろ陛下にもはっきり申し上げなければ」
「え?今何か言いましたか?」
「いいえ、何も。じゃあ行きましょう」
飛び立つ直前、ドラちゃんが大きく咆哮した。
夜になって結界外で活発的になっている魔物たちを牽制した咆哮で、最強の種のドラゴンに心を折られた魔物たちはすごすごと森の奥の住処へと引き返してゆく。
人々に手を振られながらコロニーを後にして、クリスタルパレス内で夜になってもせっせと家を建てているグリーンリバーから派遣したエプロン姿の魔物たちに手を振ってからグリーンリバーに戻った。
「デス、こっちに来て。あのね、考えたの。その手のこと」
「………」
部屋に戻ると、ラスがドレッサーの中をごそごそし始めて、コハクはやきもちを妬きながらもラスの隣でドレッサーを覗き込んでいた。
「本当はコーに似合うかなって思って用意してたんだけどデスにあげるね」
「俺のために用意してたんなら俺が使うし!」
「コーにはまた似合うの用意してあげるから。あったあった」
ラスが得意げに手にしたのは、真っ黒なレザーグローブだった。