魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスはぷんすかしているコハクに腕枕をしてもらうと、ぴったりと身体を寄せて膨れっ面の頬を指で突きまくった。


「コー、デスは弟みたいなものなんだから怒らないで」


「…怒ってねえし!俺にとってもデスは弟みたいなもんだし!…居たら、の話だけどな」


「うん、私にも弟は居ないから、もし居たらあんな可愛い子だったらな、って思ってるよ」


「可愛い子、ねえ」


もうどの位長く生きているのか知らないが、デスが純粋無垢なまま今まで生きてきたのは…悲しいことだ。


誰もデスに楽しいことや悲しいこと、嬉しいことを教えてやらなかったのだから。


「チビが最近デスばっか構うからパパはぷんぷんでちゅよー」


ラスの腹にそっと耳をあててみると、まだ平らの腹は何の反応も示さなかったが、コハクは髪を撫でてくれたラスの手を取って指先にキスをして起き上がると、手には魔法のようにふわふわの靴下を手にしていた。


「身体冷やすとベビーが寒がるし。チビ…俺またこれから忙しくなるけど、寂しがるなよ。ちょくちょく会いに行くし」


「うん、わかった。ノームさんたちと畑を耕すんでしょ?時々私も手伝っていい?」


――ラスのグリーンの瞳はきらきらしていて、自分の瞳が疎いコハクは生まれてくる子供にこの赤目が遺伝しないように祈りながらラスを寝かせたままてきぱきとドレスを脱がせて笑った。


「チビのは農耕じゃなくて、ガーデニングな。いい土をグリーンリバーから運ばせるから、チビには身体に無理がかからない程度に果実の種を植えてもらおっかなー」


「うん、する!汚れてもいい恰好で行かなくちゃ」


すでにわくわくしてはしゃいでいるラスに対して、まっさらで真っ白なラスの身体にわくわくしてはしゃいでいる魔王は己の理性と力いっぱい戦いながら保温素材のもこもこのピンクのネグリジェを着せて、自身はいつものようにシャツを脱いで上半身裸になると、にこにこしているラスの鼻を甘噛みした。


「なーんだよ」


「コー、2人きりだね。どうする?このまま寝ちゃうの?それとも…どうする?」


「!あ、あ、あのさあ、それはさあ、そのー…、え?マジで?チビからお誘いが!」


「誘ってないもーん、聴いただけだもん」


「えー!?チビが意地悪すんだけど!」


コハクと一緒に居るのが1番楽しい。

とても、とても。
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