魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
そもそもコハクはラス以外にも甲斐甲斐しい男なのだと感じた。

もちろんラスに対しては甲斐甲斐しい以上のものがあったのだが、王国再建に関してもラスに関しても、そしてデスに関してもこちらが気が付かない小さなことにもすぐに気付いて自慢することなくやってのける。

…本来自慢したがりの性格のはずなのだが、四精霊の件に関しても最初は“俺ってすげえだろ”と言わなかった。

ただラスには誉められたいらしく、“俺ってすげえだろ?”と聴いていたりするが。


「あ、こら、グラスしっかり持てって。あーめんどくせえな、ローブ脱げ!後で洗っといてやっから」


「………うん」


「…お前たちは一体どんな関係性なんだ?性格も違うしお前が構うようなタイプには見えない」


「こいつ、俺が魔界に遊びに行った時侵入者だと知って襲ってきたんだ。まあ鎌持ってたしすぐ死神だって気付いたけど俺不死だし。決着つかねえし。で、こいつがふてくされてまん丸になったってわけ」


「……ふてくされて…ない」


「嘘つけ。鎌その辺に放り投げて膝抱えてまん丸になってたじゃねえかよ。じゃあいじけてたのか?」


――デスと話している時のコハクは本当に楽しそうにしていて、コハクにからかわれたデスは皆に背を向けて膝を抱えて文字通りまん丸になった。

リロイはまだまともにデスと話していなかったので、なんとか会話を引き出そうと考えた結果、ラスを引き合いに出した。


「ラスはどう?君に構ってばかりだけど面倒じゃない?」


「……………大丈夫」


ようやく一言だけ返ってきたので少し気を大きくしてデスの隣に移動したのだが、デスは一瞬ちらっと目線を寄越しただけでまたすぐ俯いてしまった。

今まで友達が居なかったのならばこの反応は当然のことだろう。

こちらから歩み寄らなければデスから歩み寄ってくることはないだろうと思ったリロイは少しずつ距離を縮めることを決意した。


「コハク様、ラス王女の体調はいかがですか?」


「今んとこ安定してる。それよかお前最近ずっとお師匠と行動してるけどあいつ発作起こしてねえか?そろそろ薬作らないと…」


「私があなたが作った薬より画期的に症状が和らぐものを作りましたから大丈夫ですよ。それにいつでも発作が起きていいように部屋も同じにしましたから」


全員、きょとん。
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