魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
オーディンとローズマリーの仲が進展している…

ひとつの部屋を共有しているということは、ひとつのベッドを共有しているということ。

想いも、共有しているのか?


「…なんですか?複雑そうな顔をしていますね」


「はあ?してねえし。俺は…お師匠には幸せになってほしいって思ってるんだ。持病抱えたまま永遠を生きて行かなきゃなんねえんだ、不安になるだろうし、誰かに守ってもらいたくもなるはずなんだ」


「ですからその役目は私が。長年放浪してきましたが、ひとつの場所に留まるのもいいかもしれませんね」


…嘘をついているようには見えない。

ひどく茫洋としたのんびり口調だが、もし…もしローズマリーを不幸な目に遭わせるのならば、オーディンにはそれなりの覚悟をしてもらわなければ。


「やめて下さいよ、瞳に魔力をこめて私を見ないで下さい」


「…まあいい。俺は所詮お師匠に追い出された身だからさ」


「………」


――結局デスはほとんど口を開くことはなかったのだが、嫌がる素振りはなく、皆の話を聴いているように見えた。

コハクとオーディンとリロイはその後好き勝手にクリスタルパレスのことや旅先で遭遇した面白い出来事などを語り、今までずっとひとつの場所にじっとしていたデスはコハクからローブを脱がされて心許ない思いをしつつも膝を抱えて耳を傾けていた。


「………ふあぁ…」


「ん?眠くなったか?あー、まあいい感じで深夜になっちまったな。じゃあお開きにするか。小僧はボインと同じ部屋なんだろ?」


「な…っ、違う!僕とティアラはそんなんじゃ…」


むきになって荒々しく席を立つと、それにつられて視線を上げたコハクは背もたれにだらりともたれ掛りながら趣味の悪い笑みを浮かべていた。

ティアラを汚されたくないリロイはさらに反論しようとしたが…他国の王女を庇うのもやっぱりなんだか変だ。

本来はラスへの扱いについて重々くどくどとコハクに注意をしなければならないのだが…


「お前が帰って来ねえから心配して大嫌いな俺んとこに来たんだぜ。本当は俺に頼みごとなんかしたくなかっただろうなー」


「…」


「………ふわわわぁ…」


またデスが欠伸をしたのでコハクもオーディンも腰を上げると、コハクはベッドから掛け布団を取ってデスに向かって放り投げた。

つくづく、デスも手がかかる。
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