魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「好きな女は居ないのか、と聴いている。居ないのか?」


噛み砕いて再度問うと、デスは膝を抱えて椅子に座り、両手でマグカップを包み込んだまましばらく考え込むと、答えに行き着いたのか少しはにかんで見せた。


「………ラス」


「お前…それは魔王には言わない方がいいぞ。ラスを愛している、という意味なのか?」


「…………愛…?何それ…」


…会話にならない。

外見は立派な成人男性なのに、中身はまるで子供以下。

どうしたものかと考えていると、食卓の間にラスを抱っこしたコハクが現れて、ラスがグラースとデスに手を振った。


「おはよう、早いねっ」


「お前こそ…こんな早くにどうしたんだ?」


「今日が楽しみで眠れなかったの。わあ、それココア?美味しそう」


「待てって、俺が作ってきてやっから」


グラースの隣にラスを下ろすと、急にデスが立ち上がってラスの隣に移動しつつ座りつつ、あまり中身の減っていないココアをラスの前に置いた。


「?飲んでいいの?」


「………うん」


すでに手にグローブを嵌めていたデスが贈り物を喜んでくれたことが嬉しかったラスは頭をよしよしと撫でてやり、デスも手を伸ばしてラスの頭をよしよしと撫でたので、魔王、きりきり。


「あんま俺の天使ちゃんに触んなよな」


「…………俺…今日…頑張る」


「でも日傘差して鍬は持てないでしょ?私が使ってもいい?」


「………うん」


「それでグラースとデスは何のお話してたの?聴きたいな」


ラスが足をぷらぷらさせながらテーブルに頬杖を突くと、デスもそれに倣って頬杖を突いたので、グラースは吹き出しながら手で口元を隠した。


「いや、大したことは話してない。そいつ全然話さないんだ」


「慣れると結構話すよ?ね」


デスに相槌を打つと、いつもは隠れている目元が少しだけ見えた。

少し垂れた瞳は優しくて、コハクが居ないのを確認したラスはデスの頬にちゅっとキスをした。


「コーには内緒だよ。ほっぺにキスくらい挨拶なのにすぐ怒るんだから」


「…………俺も…する」


ラスが突き出した頬に軽く唇を押し付けたデスはまた急に立ち上がると、畳んでいた日傘を差して庭に下り立ち、しゃがみこんでまん丸になった。


「ふふふ、照れてる」


…やっぱりラスは最強だ。
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