魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクの特権は、“ラスを抱っこすること”。

他にも色々あるのだが、ラスの脚となり、またラスが抱っこをねだるのも自分だけにだと知っている。

いくらラスとデスが親しくなろうとも自分が特別であることは知っているのだが…なにぶん魔王は心が狭すぎる。


「俺がココア淹れてやったのにデスと間接チューとか有りかよ…」


「間接だよ?本当にしたんじゃないし、コーにしかしないから。ね?だから怒らないで」


ラスを馬車に乗せる時、機嫌が最高に斜めになっていたコハクに抱っこされたラスが唇にちゅうっとキスをすると、明らかに機嫌が改善しつつもお尻を撫でまくりながらなおも言い募った。


「でもさあ、俺は心配なの!あいつがもし本気でチビを好きになったらさあ」


「好きになったって私はコーが好きなんだよ?お嫁さんの言うことが信じられないの?コーの馬鹿」


そう言いつつ隣を歩いていたデスに手を伸ばそうとしたので慌ててぎゅっと胸に抱き込むと、後ろをついて回っていたケルベロスを顎で指した。


「お前はあっち乗れよ。魔界コンビ仲良しこよしだろ?」


「………わかった。お腹…気を付けて…」


「ありがとう。ベルルがくれたヴェールをお腹に巻いてるから大丈夫だよ」


ラスの肩に乗っていたベルルが自慢そうに鼻を鳴らすと、ドラちゃんとケルベロスにそれぞれ乗り込んだ一行は一路クリスタルパレスに向かい、巨大なコロニーの中心にあるリロイたち専用のテントの前に着くや否や、すぐに人だかりができてしまった。


特にグラースとリロイは女たちに人気があり、ティアラは男たちに人気がある。

オーディンとローズマリーはいつもコロニーには現れずにあちこちで調査を行っているので、その姿を見る機会は限定されている。

そしてコハクとラスは超美男美女のカップルで、“一目見たい”と願う者が続出してあっという間に囲まれてしまった。

…デスは不気味がられていたが。


「おい小僧、移住希望は今日の受付で終了だ。今日中にマンションの設計図完成させるから人手を募っとけ」


「わかった」


「午後から開墾地の方に移る。チビはそれまでゆっくりしてろよ。あとオーディンとお師匠は…」


てきぱきと指示を出すコハクを心底信頼しているラスは、コハクの頬にキスをして邪魔をしつつぎゅうっと首に抱き着いた。
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