魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「土いじりって楽しいね!」


コハクたちから少し離れた柵の傍に座り込んで花の種を植えていたラスは、肥沃な土をスコップで少し掘っただけですぐに顔を出すミミズを見て瞳を細めた。

彼らが土を綺麗にして、もっといい土にしてくれるのだ。

今までほとんど母国の城の花壇をいじったことのなかったラスは、皆に指示をするコハクにちらちら目を遣りながら腹を擦った。


「ラス、大丈夫?きついんじゃない?」


「うん、大丈夫。コーがかっこいいなって思って見てたの」


「のろけ?ご馳走様」


ティアラときゃっきゃと騒ぎながら種を植え、心配してくれるティアラのためにこまめに休憩を取っていると、コハクの傍でデスがまん丸になっているのが見えた。


「デスがいじけてる。またコーがいじめたのかな。ちょっと行って来るね」


ブーツが足首あたりまで埋まるので苦労しながらいじけているデスの背中を撫でると、無言のままローブの裾を掴んできたのでラスはコハクのわき腹を指で突いた。


「どうしたの?いじめちゃ駄目って言ったでしょ?」


「いじめてねえし。ローブ着たまま鍬振んのは動きにくいから脱げよ、って言っただけだし。おいこら、チビが心配すっから丸くなんなって言ったろ?」


「………脱ぎたくない」


「じゃあ一緒に種植えよっか。それならローブ着ててもできるでしょ?」


「チビ!そいつのこと甘やかしすぎ!甘やかすなら俺を甘やかしてくれ!べったべたのぎっとぎとに!」


「デスはまだ人前に慣れてないんだよ。コーは後で甘やかしてあげるから私にデスを任せてもらってもいい?」


ラスがデスの頭をよしよしと撫でると、ようやく落ち着いて来きたのかデスが立ち上がりつつもラスの手をそっと繋ぎ、グラースが小さく息をついた。


「持久戦になりそうだな」


「グラースもゆっくりね。じゃないと嫌われちゃうよ?」


「それは困る。さあ、もう行け。お前の穴は私が埋めておいてやる」


デスが放り投げた鍬を手にしたグラースに手を振ったラスは、デスと手を繋ぎながらコハクと同じ位の背のデスを見上げた。


「もう大丈夫だよ。疲れたならテントに戻ってる?」


「………傍がいい」


雛のままのデス。

ラスは弟ができた気でいたが…デスはどう思っているのだろうか?
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