魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ケルベロスは急いで飛んでくれたのだが、豪雨は容赦なくラスたちの頭上に降り注いだ。

だがデスが庇ってくれたおかげでラスはあまり濡れずに済んだが、デスはびしょ濡れになり、城へ着いた時には服が身体にべったり張り付いていて、デスの異常な細さが露わになった。


「大変っ。お風呂に入れてあげる!」


「………一緒?」


「一緒がいい?でも…きっとコーに怒られるから、私は服着てるね。早く。こっちこっち」


ラスが走ろうとするので繋いだ手を引いて引き留めたデスは、何も考えずにラスを抱っこして螺旋階段を上り始めた。


ラスを抱っこするのはコハクがいつもしていること。

こうすればラスは転ばないだろうし、安全だ。


無心のまま取った行動はラスを驚かせたが、すぐに笑顔になるとデスの頬にキスをして前髪から滴る水滴を拭ってやった。


「グラースに素顔を見せてあげればいいのに。きっと喜ぶよ?」


「………別に…いい…」


人見知りが前に立ってグラースを拒むデスを敢えてそれ以上説得しなかったラスは、自室に着くとローブを脱ぎ、デスを椅子に座らせると当たり前のように濡れたシャツのボタンに手をかけた。

コハクが見たら噴飯ものの行為だったが、デスを男として見ていないラスは全く気にせず、またデスも何故脱がされているのかわからずにぼんやりしていて、上半身裸にさせられると、ラスが目を見張った。


「すっごく細いね。コーも細いけど…デスのご飯の量はこれから2倍にするから!」


「………見ないで」


ちょっとだけ恥ずかしくなったデスが胸の前で両腕をクロスさせて裸を庇うと、ラスはデスの背中を押しながらバスルームに向かい、さすがにパンツには手をかけようとしなかった。


「それ脱いだら中に入ってきてね。お湯加減調節してくるから」


「………うん」


相変わらず何も考えないままのろのろとパンツを脱いでぼんやりしていると、バスルーム内から何かを倒した盛大な音がした。


「きゃーっ!」


「………ラス…?」


少し慌てた声を上げたデスが中へ入ると…

ラスがシャワーのヘッドを大理石のタイルに落としたらしく、無軌道の水に全身ずぶ濡れになり、ドレスが身体に張り付き、座り込んだラスがまるでマーメイドのように見えた。


「………なにこれ…」


そう言って見下ろした自身の身体。
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