魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
なんだかいつもと様子が違う自分の身体…

ラスは暴れ回るシャワーヘッドを押さえるのに必死になっていて、デスに全く気付いていない。

…ラスの濡れた身体を見ているとずきんずきんと身体が疼くような感覚に見舞われたデスは、いつもののんびりとした動作ではなく機敏にバスルームから出て腰にタオルを巻くと、思いきり首を傾けた。


「………何…これ…」


「デス?ごめんね驚いたよね?びしょ濡れになっちゃった…私も一緒に入ろうかな?」


「………いい。自分で…できる…」


…ラスには見られたくない。

ドアを隔てて会話をした後、デスは濡れた服をかき集めて胸に抱くと部屋を出て隣の部屋に入り、シャワーを浴びた。

バスルーム内の鏡には頬が上気した顔が映っていて、“恥ずかしい”と感じたことのない感情に動揺しつつ熱いお湯で身体を洗い流すとだんだん落ち着いてきたので一安心。


バスタオルで髪を拭きながら部屋に戻ると…いつからなのか、控えめなノックが聴こえた。


「デス?居る?どうしたの?お風呂ひとりで入れた?」


「…………うん」


ドアを開けると心配げな顔をしたラスが所在なげに立っていたので中へ招き入れて背中を見つめると、ラスもまだ髪がびしょ濡れで、手にしていたバスタオルでラスの金の髪を優しく拭ってやると、ラスが大勢を入れ替えて真向かいになり、同じように手にしていたバスタオルで髪を拭いてくれた。


「ありがと。ほんとはね、私もひとりでお風呂入れないの。…ううん、入れるようになったんだけど、コーが“俺がやりたい!”って言うから」


「………寝る?」


「眠たいの?じゃあコーが帰ってくるまで横になってよっか」


屈託なく無邪気に笑ったラスは、皆とは違う。

ラスはいつも光に包まれて輝いているように見えるが、コロニーに居る人々にその光は感じられない。

一緒に居るとあたたかくなって、コハクに怒られようが蹴られようが手を繋いでいたいと唯一思う存在。


――デスはふかふかになったラスの頭を撫でるとベッドに入り、先程の身体の変化を小さな声で訴えた。


「………さっき……変だった…。俺の…身体…」


「え?風邪引いたのかなあ?あったかくしなきゃ。抱き着いてあげよっか?」


「……うん」


優しくなれる気がする。

一緒に居れば、優しく――
< 389 / 728 >

この作品をシェア

pagetop