魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
クリスタルパレスには現在レイラとエリノアが住んでいた。

グリーンリバーから通うこともできたのだが、それではコロニーに居る人々たちからの沢山の要望に応えることができない。

もう夜半を過ぎていたのでこの日はクリスタルパレスに泊まることにしたコハクは、バルコニーから見える無数の火に瞳を細めた。


「もうすぐ人が住めるようになる。魔物たちを総動員してマンションを建てるから、あと2か月ってとこか」


「マンションってそんなにすごいの?早く見てみたいな。ねえ、それよりもコー…行きたいところがあるの」


「行きたいところ?あんま出歩かせたくないんだけどなー」


夜は風も冷たく、少しバルコニーに立っているだけで身体が冷えるので、ぱちんと指を鳴らして暖炉の炎を大きくすると、真面目な顔をしているラスの首にマフラーを巻いたり、手に手袋を嵌めたり、もこもこの毛皮のコートを着せたり気忙しくしながらラスを抱っこした。


「どこだよ」


「…コーのお城」


…2年前のあの日から戻っていない魔王城。

あそこに立ち入る者など居るはずがなく、きっと血痕もべったり残ったままのはずだろう。

コハクにとってはもうすでに過去のことだったが、ラスが2年もの間苦しんでいた歳月は、半ばトラウマとなっている。

敢えてその場所を再び訪れたいと言うのだから、乗り越えたいのだ。


独りぼっちだった2年間を。


「…わかった。明日行くか?早い方がいいだろ?整理つけたいんだろ?」


問うとラスの顔がくしゃりと歪み、みるみる間に涙が溢れて頬を伝うと、コハクは中へ戻ってソファに座り、膝にラスを乗せたまま鼻をつまんでラスをからかった。


「ブサイクになってんぞー。チビの胸のつかえが取れるんなら何でもするし、もっと甘えたっていいんだぜ。なんつったって俺はチビの勇者様だからさ」


「うん…。ごめんねコー。思い出せなくっても、コーのお城のあの部屋に行ったら……」


「ん。さ、どうせデス寝てんだろうし叩き起こして全員で飯食おうぜ。腹減ったろ?ベビーにもたっぷり食わせないとな」


「うん。えへへ、コーが優しい。コー、大好き」


――そうして魔王がでれにでれている時…


隣の部屋では大変なことが起こっていた。
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