魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
その鎌は真っ白で、鈍く光って反射すると…その光がグラースの頬を白く染めた。


「………殺したく…ない」


「殺したいと思うほどいやだったのか?私は女として魅力がないのか?」


魅力だの恋だの愛だの、はっきり言って意味がわからないし興味もない。

グリーンの瞳で強く真っ向から見つめてくるが、その瞳の色がラスと同じだな、とぼんやり考えながらベッドから降りると、ドアを開けてグラースを促した。


「………もう来ないで」


「つれない奴だな。襲えばどうにでもなると思っていたが固い奴だ。ラスを諦めたら私のところに来い」


「………」


シャツを着たグラースがちらりと流し目を送りながら出て行き、デスは部屋に戻らず隣のコハクとラスが居る部屋のドアをいつもより少し強く叩いた。


「なーんだよ!飯ならこれか、ら………お、お前…どした?」


「………わかんない」


…シャツのボタンは全部外されていたし、唇にはグラースがつけていたリップグロスがべったりついたまま。

明らかに“襲われました”という風体だったので、コハクは爆笑しそうになりそうのを堪えつつデスの首根っこを摑まえて部屋の中に引きずり込んだ。


「わ…っ、デス?どうしたの!?着替えの途中?」


「………ううん」


ソファに座っていたラスに小走りに駆け寄ると、いつものように膝を抱えて座ってラスの頭をよしよしと撫で続けた。

ラスはきょとん顔でデスを見ていたが、明らかに様子がおかしいので、正座して真向かいに座るとシャツのボタンをかけてやりながら、唇についているリップグロスを見つめた。


「お化粧したの?リップグロスついてる」


「……違う。………魔王」


「あん?なんだよ」


様々な妄想をして楽しんでいたコハクがテーブルを挟んだ正面に座ると、デスはラスの人差し指を握って優しく垂れた瞳でコハクをじっと見つめた。


「………ぎゅってしてもいい?」


「ああ?まさかチビをか?…………5秒だけな」


「私を?うん、わかった。じゃあ膝に乗るね」


コハクがあからさまに舌打ちをしたが、デスはお構いなしに膝に上がってきたにこにこ顔のラスをそっと抱きしめて、悟った。


グラースとは違う。

ラスは…特別だ。


――恋や愛に気付いたわけではなかったが、“特別”だと感じた。
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