魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「ねえコー…どうしてデスはお化粧してたんだろ。どうして?」


「するわけねえだろ。あれはさあ、グラースにキスされたんだぜきっと。あいつがうじうじしてっから襲ったんだろ」


ディナーの席にグラースの姿はなく、おかしいとは思っていたのだが、全くもってそんな想像をしていなかったラスはベッドの上を転げ回りながらコハクのわき腹を指で突いた。


「デスがグラースの襲われたのっ?じゃあ2人は…」


「未遂未遂。最後までやられてやしねえだろ。まああいつ、グラースに全然興味無さそうだったしな。あんましつこく言い寄るとここにも寄り付かなくなるぜ」


「それ駄目っ。もしデスが来なくなったらベビーが動かなくなっちゃうよ?コーはそれでもいいの?」


「駄目駄目駄目!なんでかあいつには反応すんのが癪だけど、それは駄目!安定期に入るまで居候させてこき使ってやろうと思ってんだから逃げたって連れ戻す!」


――と言いつつもコハクとしてもデスは弟分なので、すぐにいじけてしまうが根が素直すぎてからかうと超楽しいので、しばらくは魔界に帰すつもりはない。

それよりも自分たちのことだ。


「あのさチビ…明日のことなんだけど」


「うん?どうしたの?」


灯りを全て消して暖炉の光りだけが仄かに部屋を照らしだす中、コハクはベッドで頬杖を突きながらもう片方の手でラスの腹を撫でた。


「…俺はさ、2年間眠ってたのがまだ信じらんねえし、チビが成長してんのも未だに見慣れねえんだ。なあチビ…俺に話してないこともまだ沢山あるだろ?」


再会してからラスは明るかったが、今も時々自身の影を見下ろしては何か呟いている時がある。


コハクにとっての2年間は不死ゆえにあっという間だが、ラスは違っただろう。

その間の2年間…一体どう過ごしてきたのだろうか?

毎日そのことについて寝る前に語り合うが、ラスの口は決まってそういう時重たかった。


「話してないこと…沢山あるよ。知りたい?」


明るいグリーンの瞳にはくっきりと自分の顔が映っていて、ラスの全てを知りたかったが、自身の過去をまだ全て語りきれていないコハクもまた同類。

これからいやというほど共に生きるのだから、それはラスが話したくなったらおいおい話してくれたらいいこと。


「…やっぱいい。うん、やめとこう」


そしてラスを抱きしめた。
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