魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
翌朝、コハクが“絶対俺が着替えさせる”と言って聞かないので、しっかり腹帯を巻かれてドレスと白いローブを着込んだ。

…あそこは雷が始終鳴っているしいやなところだけど、あそこには2年間苦しめていたものがある。


そして…一瞬だったけれど、幸せだったものも、ある。


「じゃあ行くか。ドラ野郎やワン公は置いてくからな。馬車が1番安心安全運転!」


「うん、わかった。じゃあもう行く?」


問うと身支度を終えたコハクがふわっと抱っこしてくれて頬にキスをすると、控えめで小さなノックが聴こえた。


「ラス、居る?みんなで朝食を…」


「俺たちは出かけるからいい。ワン公たちは召喚して置いてくからお前らだけで今日は行動しろ。土はいい感じであったまってるし、今日は種植えるだけで発芽するはずだぜ」


「?どこへ出かけるんだ?」


訪ねてきたのはリロイで、足早に階段を下りて行くコハクを追いかけながら問うたが、コハクの首に抱き着いているラスもにこっと笑っているが行く先を教えてくれない。

不安を覚えたリロイはコハクの腕を引いて立ち止まらせると、強い金の瞳で再び行く先を問うた。


「どこに?」


「ちっ、うるせえな。俺の城だ。もういいだろ、これ以上は答えねえからな」


「…魔王の…城…」


――あの時…手にしていた魔法剣が心の隙間に囁きかけてきた言葉を、リロイは今も忘れられないでいる。


『お前は本当にそれでいいのか?お前の夢はラスを花嫁にすることだろう?あの男はラスを幸せにできるのか?“魔王の花嫁”のレッテルを貼らせるつもりか?老いてゆく姿を見られてもいいのか?さあ、今すぐ取り戻しに行け』


抗った。

戦ったけれど、水晶の強大な力を取り込んだ魔法剣は、“コハクとラスを祝福する”と口先三寸で思い込もうとした自身の想いを嘲笑い続けた。


『魔王が居なくなれば、ラスはお前を選ぶ。お前が花嫁にして、国を継いで、王となるのだ。ラスの“勇者様”として』


『そうだ…僕が…ラスの勇者に…!』


…呑み込まれた。

魔法剣を手にふらふらしながらコハクの部屋を訪れて、そして――


ラスの魂を、壊してしまったのだ。


「ぼ、僕は…」


「取り戻しに行く。チビと俺の思い出を」


強い決意と共に。
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