魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスの涙が渇いた血痕の上に落ちて赤く滲んだ。


リロイの胸を叩けば叩くほどにその表情は苦渋に歪み、あの時どんな言葉をリロイに浴びせたのかも正直言ってあまり覚えていない。


だが錯乱状態だった自分を部屋に駆け込んできたティアラが魔法をかけて眠らせて…それから数か月…ゴールドストーン王国に着くまで眠らされた状態だったのは、彼らにとって最良の決断だったことは頷ける。


…そうでもしなければきっと、あの部屋のバルコニーから飛び降りて、コハクの後を追って逝っただろうから。


「俺は生きてるじゃんか。四精霊が助けてくれたんじゃんか。チビが連れ戻しに来てくれたんじゃんか。過去を受け止めにここに来たんだろ?じゃあなんで泣いてんだ」


「…泣いてないもん…ぅ、ぅっ、泣いてなんか…」


「じゃあ目から鼻水が出てんのか?俺が吸い取ってやる!」


ラスが泣いているのもお構いなしに、ラスを抱っこし直して円状に広がっている血痕を2人で見下ろした。

色々思い出して、2年間を振り返って、苦しくて悲しくて切なかった日々がぶり返したラスの泣き声が止まないのは…正直嬉しい。



ラスの身体の中いっぱい、自分のことで満たされていたのだろうから。



「悲しいこともあってさ、チビを2年間悲しませたけどさ、生きてる。もうチビの影でもねえし、俺たちはこれからずっと一緒に生きてくんだ。もう絶対俺のことで泣かせねえって誓うから、泣き止んでくれ。な?」


「……う、ん、わか、ったあ…っ」



それでもしゃくり上げて肩を揺らしているラスの頬にちゅうっと盛大なキスをしていると…



『相変わらず色ぼけ満載ねえ』


「ウンディーネとシルフィードか。召喚してもねえのに勝手に出てくんなよな』


『あらあ、心外だわ。私たちがあなたをずっと監視してたから助けてあげられたのに』



――いつの間にかラスの頭には半透明のウンディーネとシルフィードが留まっていて、一気に涙が引っ込んだラスは顔を輝かせて彼女たちを掌に乗せた。


『精霊界に連れて行った時のこと…知りたいなら見せるわよ。どうする?』


「…うん、見たい。お願いします」


コハクが生きているからこそ、見れる。

生きているからこそ――
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