魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクに抱っこされたラスは、コハクと一夜を共に過ごしたベッドに身体を横たえさせられた。

あの時このベッドでどんなに幸せだったことか。

いや…今も毎日幸せだ。

眠る時も目が覚めた時も、コハクが隣に居るのだから。


「立ってると危ねえから寝てた方がいいんだってさ。チビ、俺が手ぇ握っててやっから。てか俺も一緒に見るし。な?」


「うん、わかった。コー…」


なお不安そうな声を上げて瞳を潤ませているラスの鼻をつまんでいると、ウンディーネが咳払いをして胸を反らしてふんぞり返ると、ラスとコハクの額に手を伸ばした。


『魔王が白騎士から刺されて私たちが精霊界に連れて行くまでを見せるわ。ちゃんと見て』


いつも茶化すウンディーネとシルフィードは吊った瞳を下げて微笑むと、ラスの緊張をほんの少し拭い去った。



『おチビさんが魔王を迎えに来たのだから、魔王は今ここに居るのよ。あなたが来なかったら…コハクはずっとずーっと精霊界で生きていたんだから』


「え…そう、なの…?やだ…そんなのやだ…!」


『でも神の鳥が導きに来たでしょ?魔王はこんなだけど、慕ってる者は居るのよ。神にも届くあなたの叫びと、オーディンの無限の知識から選択した行動。全部が繋がり、今コハクが在る。それを忘れないで』


「“こんなだけど”とか余計だっつーの」



――ラスが何か言おうとした時、ウンディーネのひんやりとした水色の半透明の細い手が額に触れた。

すると勝手に瞳が閉じてしまい、感覚が残っているのはコハクが握ってくれている左手だけ。


『行くわよ。見ておいでなさいな』


握る手にぎゅっと力がこもった。

ぎゅっと握り返した時――突風が吹いて驚いたラスが瞳を開けると…



バルコニーにはコハクとリロイの姿が。

手すりに両手を添えてもたれ掛っていたコハクの胸からは…あの忌まわしき魔法剣が生えていた。


上がりそうになる悲鳴を両手で口を塞いで堪えていると、どうやら自分の視点がコハクたちを見下ろしていて、それがウンディーネの視点なのだとわかった。


『刺されたわ…!シルフィード、魔王が!』


「て、めえ…」


「ラスは…僕のものだ」


コハクが血の海に沈む。

スローモーションに見えた。

虚ろだったリロイの瞳が、急にクリアになった。


こうしてコハクは、居なくなったのだ。
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