魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
それからは、映像が飛び飛びになった。

ラスの視点は常にウンディーネ視点で、彼女がコハクの傍に居ない時は違う日になったし、コハクの胸の無残な傷は数日で完璧に塞がった。


『後は…どの位かかるのかしら。1年?10年?…100年?おチビさんはその時にはもう…』


『魔王がその程度で死ぬものか。俺はそれよりもこいつが目覚めたらどういびってやろうかと今そればかりを考えている』


サラマンダー以外の者が心配顔をしているのに、不遜な態度で鼻を鳴らしたサラマンダーだったが…実は誰よりも長い時間をコハクが眠っている部屋で過ごしていた。

コハクは火属性と相性が良かったし、憎まれ口は互いに叩けど嫌いなわけではない。

むしろ…


『儂がさっき様子を見に行った。おチビさんは…馬車に乗せられて母国に帰還中じゃ。それも魔法で眠らされておる。今のままでは自殺しかねんという判断らしい』


ノームの言葉で皆がコハクに目を遣った。

呼吸は静かで正常だが、このまま一体いつまで眠り続けるのか?


カイと対決した時に受けた傷で、コハクの本体は16年もの長い間を棺の中で送らねばならなかったのに。


『あの時と同じだったとしたら、おチビさんは32歳…。16年もコハクを待てると思う?私たちにしたら一瞬だけれど、人は違うわ』


『早く目覚めてもらわなきゃ。魔王、早く目を覚ましなさいよ。でないと私たちがイタズラしちゃうわよー』


…とか言いつつ、時々高熱を出してうなされるコハクを着替えさせたり身体を拭いてやったり、四精霊はコハクを献身的に介抱していた。


だが、2年経つまでコハクは目覚めなかったのだ。


そしてウンディーネたちが度々…数日を開けずにラスの様子を見に行き、憔悴しきった表情に胸を痛めて精霊界に戻ってはコハクの枕元でその様子を聞かせ続けた。


『おチビさんが今にも死んでしまいそうよ。死ぬためにいつも魔法剣を見に行ってるわ。でもいつも躊躇しているの。もしかしたらあなたが生きているんじゃないかって』


「…………ビ…」


――ラスの様子を聴かせる時にだけコハクは反応し、ラスの名を呼んだ。

だからこそ四精霊たちは頻繁にラスの様子を見に行き、眠っているコハクに報告し続けた。


また会わせてやりたい。

幸せな2人をまた見たい、と願いながら。
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