魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
“帰らないと”。


ひとしきり叫び続けた後、コハクがぼそりと呟き、起き上がろうとしたが脚が萎えてふらついたのをサラマンダーが支えた。


『どうやって戻る気だ?お前は今元の世界へ戻れる状態じゃない。落ち着いて状況を整理しろ』


「うるせえ!2年だぞ…2年も俺はチビから離れて…」


『おチビさん以外はみんなあなたが死んでいるものと思っているわ。でもそうね、何か動き出したみたいなのよね。何かが…』


シルフィードの言葉遊びのような微笑と内容がコハクの関心を引いた。

ふらつきながらもなんとかひとりで立って腕組みをすると、シルフィードは踊るようにくるくるとコハクの回りを回りながら歌うように囁いた。


『おチビさんが動き出したの。あなたは死んでいない…という確証を得たのよ。もうすぐここに来るわ』


「ここに?だってお前…ここは精霊界じゃねえか。こんなとこに人間が来ると…」


『そうね、長い間滞在すればここの住人になってしまうわね。だけどあなたは手出ししてはいけない。これは神に下された試練なのよ。おチビさんはそれを乗り越えなければあなたとは会えない。魔王魔…よく考えて。そこまでしてあなたに会いたがっているのよ。今までのおチビさんは…死んでいるのと同じだったのよ』


ウンディーネたちは始終人の世界を訪れ、密かにラスを見守った。

少しずつ大人になって美しくなり、すべてのものを拒絶し、殻に閉じこもっていたラスがある日“コハクの夢を見た”と顔を輝かせた時…何かが変わる時が来た、と感じた。

それからはものすごいスピードで事態が動き始めて、オーディンやローズマリーが揃った時、“それ”はラスの前に現れたのだ。


『神の鳥よ』


「神の鳥…?伝承にある伝説の鳥のことか。神が造った5色の鳥が…なんなんだよ」


『おチビさんは毎日神に叫び続けていたわ。“コーを返して”って。その叫びが神に届いたの。そして神の代わりにその伝説の鳥たちがおチビさんの前に現れたわ。そろそろやってくるわよ』


「チビが…俺のために…?俺に会いに…?」


――声が震え、一瞬嬉しそうに笑顔を見せたが、すぐにその笑顔は引っ込み、不安がコハクの肩にのしかかった。


2年も経ったのだから、2年前まではラスのことならなんでも知り尽くしていたが…今のラスは一体どうなんだろうか、と。

不安を覚えた。
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