魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクに抱きしめられながら、ベッドの傍らに落ちていた血痕を見つめた。

ようやく冷静に受け止められるようになり、この血痕も過去のものとして見れるようになったラスは、2年間開け放たれて紙類が散乱していたりグラスが割れていたりする部屋を見渡すと、むくりと起き上がった。


「コー、片づけなきゃ。今日は…泊まってく?」


「片づけなんかすぐ済むって。ほい」


とにかくグラスの破片などでラスが怪我をするのは絶対にいやな魔王が指をひゅっと振ると、割れたグラス類はふわふわ浮きながらゴミ箱に入り、紙類は机の引き出しに収まると、ラスをさっと抱っこした。


「帰ろうぜ。この城はもういいや、チビが嫌いな雷ずっと鳴ってるし、今度必要なものはグリーンリバーの奴らに取りに来させるからさ」


「うん、わかった。デスはもう帰って来てると思う?」


外を見たコハクは、日中も夜半もあまり変わりなく暗い空を見上げて頬をかくと、ラスの瞳を大きな手で目隠ししながらバルコニーに出て馬車を呼び寄せた。


「そだな、そろそろ戻ってきてるんじゃねえかな。それよかチビ…知ってたけど、ほんっと大冒険したのな。危なねえ目にも遭ってさあ、冷や冷やしたんだからな」


「でもみんな親切にしてくれたよ。あ、そうだ、コーにもあげる」


常に持ち歩いているショルダーバッグの中からオーディンに貰った金色の飴を手探りでコハクの口の中に入れて自身も口の中でからころ音を鳴らしながら馬車に乗り、コハクたちはグリーンリバーの愛の巣へと一路帰還した。


その間、馬車の中で何度も見つめ合って、何度もコハクから噛みつかれそうな勢いの情熱的なキスをされて、“この男無しでは生きていけない”と改めて実感していた。

授かった命と、コハク…

城に閉じこめられて何も知らないまま生きてきたが、これからは限りない時間をかけてコハクが教えてくれる。

だから、自分は学ばなくていい。


「お、蝋燭ついてんな。帰ってきてるみたいだぜ」


「早くっ、早くっ」


バルコニーに横づけしてラスを抱っこしたまま下ろすと、部屋に駆け込んで出ると、隣のデスの部屋をものすごい勢いでノックした。


「デスっ」


息を整えていると、静かにドアが開いた。


「………おか、えり」


「ただいまっ」


はにかんだデスの細い身体にぎゅうっと抱き着いた。
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