魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
デスが出迎えてくれたので、精一杯背伸びをして頭をよしよしと撫でてやると、デスも頭で撫で返してくれて、不機嫌顔のコハクに蚊の鳴くような声ではじめての言葉を口にした。


「………ただいま…」


「おう。ちょっと俺の城に戻ってたら遅くなっちまった。仕事は無事終わったのか?」


今度はぞろぞろとコハクとラスの部屋に移動すると、デスはレザーグローブを外した骨の手を見つめてこっくりと頷き、小さな小さなため息をついた。


「………うん」


「デスっ、お腹を触って。ベビーは今日も元気?」


「俺も触る!デス、早くしろよ」


わくわく顔のラスがベッドサイドに腰かけると、コハクはラスの隣で早速腹に手をあててみたが、うんともすんとも言わないので真剣な顔で呼びかけた。


「パパでちゅよー。ベビー、パパの声が聴こえまちゅかー?」


「………触る」


ぺとりとラスの腹に手をあてた瞬間、胎動がぴくんと掌に響いた。

デスが助けた命はデスに感謝するように何度も動いた後動かなくなったが、コハクとラスは顔を見合わせて全開の笑顔を見せた。


「ありがとう、デス。元気元気」


「なんか釈然としねえんだけど、まあいっか。サンキュ」


くしゃくしゃと髪をかき混ぜられて脱げたフードを被り直していると、コハクたちの帰還を待っていたリロイたちが顔を出しに来て部屋へと入ってきた。


その中にグラースの姿があり、警戒心を持ってしまったデスは顔を上げようとしない。

そんな反応がまたグラースを燃え上がらせることを知らず、今は我慢の時のグラースは顎を引いて妖艶な笑みを浮かべた。


「お前も戻って来ていたのか」


「……………………」


「うおい!放送事故起きてんぞ、しゃきっと喋れ!」


「お腹空いたでしょ?ご飯一緒に食べよ?」


「………うん」


ラスが俯いたデスの顔を覗き込んで尋ねると返事があり、グラースは肩を竦めて部屋から出て行った。


ラスは再びコハクから抱っこされて皆と一緒に部屋を出ると、リロイが何か問いたいかのように話しかけるタイミングを計っていたので、手を伸ばして同じ金色の髪に触れて笑いかけたので、魔王、膨れっ面。


「すっごく散らかってたよ。私を助けようとしてくれたんだよね。ありがとう、リロイ」


「…ラス……」


わだかまりは綺麗に溶けて、リロイを救った。
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