魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
リロイは2年前の自分自身を取り戻した。

表情には明るさが戻り、快活さが戻ってきたリロイを見て誰よりも喜んだのは…ティアラだ。


ティアラが大好きだったリロイが今、目の前に居るのだから。


「影が作った設計図を基に明日から建築作業にかかります。今回もコロニーの中から大勢の有志が名乗りを上げてくれたので、作業は順調に進むでしょう」


「良かった…。では私も救護班として近くのテントで待機します。指揮はあなたが?」


ラスが雛鳥に餌を与える親鳥のようにしてパンをちぎってデスの口の中に入れてやっていたのを頬杖をついてぶすーっとした顔で見ていた魔王は、リロイの視線に気付いてテーブルに突っ伏して顔を隠した。


「お前がやればいいだろ。俺はそういうの不向き。グリーンリバーの奴らは貸してやるよ」


本当はラスの関心を引きたくて仕方ないのだが、デスが居る限りそれは不可能なことをすでに学習しているので、仕方なく作戦に出た。


「じゃあ俺部屋に戻ってるし」


「コー?」


案の定ラスが見上げてきたのだが、敢えて顔も見ずに首を鳴らしながら食卓の間を出た。

すると程なくしてぱたぱたと小走りに駆ける音がして振り返れば、目的の存在ににやり。


「コー、どうしたの?置いてかないでっ」


「や、だってデスに食わせんのに夢中になってたし。なんか俺眠いしあっち戻ってみんなできゃっきゃっしてろよ」


「やだ。私も一緒に寝るもん」


子供のようにぎゅうっと腕に抱き着いてくるのは、甘えたい時の小さな頃からのラスの癖。


“仕方ねえなあ”とため息をつきながら抱っこすると、大人になって誰もが羨む美貌を手に入れたラスの唇はこれまた子供のように尖っていた。


そしてラスについて回るストーカーが背後にひそりと立っていたので、気配を全く感じることができなかったコハクは思わず飛び退った。


「おわっ!?デス…お前なあ、気配殺すなよな」


「………俺も…寝る」


部屋に戻る道中階段を上りながらラスがコハクの首に抱き着き、後ろを歩くデスに手を伸ばすと、デスは細い人差し指を握った。

笑顔のラスの口がひとつの単語を何度も口にしていた。


“お帰り”と。


「…………ただいま」


もう1度口にして、照れたように俯いた。
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